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HEROのOBのレビュー・感想・評価

HERO(2002年製作の映画)
4.5
『KINGDOM』での始皇帝繋がりで本作を久々に再鑑賞。これも前回レビューの『シカゴ』と同時期に何度も観た思い出の映画。

巨匠チャン・イーモウの最高傑作として疑わない作品。

中華を統一する為、他国を殲滅せんとしていた暴君の秦王(後の始皇帝)を暗殺すべく、相手から10歩以内の距離に近づけば必ず殺傷出来る技を持つジェット・リー扮する主人公が、秘策を用いて秦王に近づくが。。


一言「究極の様式美」

秦王の宮殿、書道修行塾、砂漠の戦場、湖畔、イチョウの乱れ飛ぶ林、碁会所といった美しく壮大な「舞台」。

黒澤の『羅生門』から着想を得たと思われる、秦王とリーの会話から事実が二転三転していく「展開」。

この、舞台✕展開毎に場面の色合いが、赤→青→緑→白へと変化していく。

この映像美のなか、ジェット・リー、トニー・レオン、ドニー・イェン、チャン・ツィイーといった中国映画の第一人者達が魅せる、安定かつ華麗な演技(というより舞)。

加えて、この映像変化のなか、唯一終始一貫した印象深いメロディを奏でるタン・ドゥンの楽曲がこの映画の悲哀を表現する。

本作は、史実がどうの、ワイヤーアクションがどうのと言うのは野暮であり、このどこまでも美しい様式美を堪能すべき映画。


最後、この主人公の判断が指し示すメッセージ(=大局観の重要性)も秀逸な、まさに名作。
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