『無宿』(やどなし)は、1974年に公開された97分のカラー作品。公開時は高倉健(1931年 - 2014年)と勝新太郎(1931年 - 1997年)が43歳、梶芽衣子(1947年生)が27歳であり、役者としての魅力は十分。冒頭はコミカルで、破天荒な勝の役柄から明るい内容が期待されるが、中盤からは常に悲壮感の漂う音楽だけで結末まで読めてしまう展開。後半の海での宝探しは京丹後市でのロケで、外国のようなまぶしい海の景色が印象的ではありフランス映画のような作品を勝は作成したかったのではと思わせる映像とストーリー展開。作品は予想通りの展開で終わって、勝もフランス映画のような作品を作れたと自己満足したであろうことは想像できる出来。
しかし、主役の三人は、他作品では一人で何十人もの相手を切り殺す剣客を演じており、敵役は、凄みをみせる当時44歳の中谷一郎(1930年 - 2004年)なので、冒頭の楽しい設定に戻り、昭和の剣客・任侠映画を代表するハチャメチャな殺陣で、観客のカタルシスを解消するような豪快な作品にできたらと考えると惜しい。勝が座頭市に覚醒し、高倉はもろ肌を脱いで、梶は匕首を振り回す。これに対して、中谷は風車で対抗(中谷は1969年から水戸黄門で風車の弥七を演じている)。3対1では分が悪いので、主役3人のうちの1人が裏切って、中谷に加勢し、夢の対決が繰り広げられるといった結末を、勝なら作れたのではないか。4人の中で誰が最強なのか、想像するのは楽しい、