Kumonohate

無宿 やどなしのKumonohateのレビュー・感想・評価

無宿 やどなし(1974年製作の映画)
4.5
傑作。

物語の下敷きになっている「冒険者たち」(監督:ロベール・アンリコ 主演:アラン・ドロン 1967年)に比べると、登場人物たちに帰る場所が無い度合いが高いぶん、太陽が降り注ぐ美しい海で沈没船の財宝を探す3人の姿が、一層切なく一層輝いて見える。「冒険者たち」を下敷きにしているのだから当たり前だが、前半はどっぷり東映ヤクザ映画なのに、後半はロマンティシズム溢れるフランス映画である。「太陽がいっぱい」を彷彿する音楽や、どんな状況でも日傘を手放さない和装の梶芽衣子が、フランス映画っぽさを加速させている。

映像も凄い。

「冒険者たち」同様、長玉が多用されているが、被写体間距離の圧縮により映像は高密度である。さらに、人物や木がフレームの上下を貫き画面を縦に分断することで、画面はさらに引き締まっている。そして、その合間に、長玉がアップで捉える役者の表情は実に自然で生き生きとしている。劇中でサキエが呟く、<宝なんか見つからなくても、こんな生活がずっと続いて欲しい>というセリフに象徴されるような、“うたかたの熱い日々” が、映像で見事に表現されている。

本作は勝プロダクションによる製作。勝新太郎という人の映画への熱い思いがビシビシと伝わってくる。
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