南森まち

80日間世界一周の南森まちのレビュー・感想・評価

80日間世界一周(1956年製作の映画)
5.0
富豪フォッグ氏は賭けに勝つため80日間での世界一周を目指すも、刑事が彼を銀行強盗の嫌疑で追う…というお話。

言わずと知れた「SFの父」ジュール・ヴェルヌの1873年出版の冒険小説が原作。
映画はJ・ヴェルヌに関する解説から始まるので、SFファンにとってはここも見所。
有名なオチの作品ですが、1873年にこれを生み出したのは天才だとしか言えない。ライト兄弟が飛行機を発明したのですら、1903年ですからね?

さてお話は、主人公・その執事・ヒロイン・刑事の四人が世界中を旅するという冒険劇になっています。
交通機関がトラブルで止まったり、離れ離れになってしまったり、囚われた仲間を救出に行ったり…と道中てんやわんやで楽しい楽しい。宮崎駿作品のアレはここからとったんだな?と思わせるような大活劇シーンもあります。
さぁ、彼らは80日間で世界一周することができるのか?

映像表現は、地域が変わるたびにまったく情景が変わり、さまざまなものや動物も見せてくれます。ロンドンに始まり、パリの街並み、スペインの闘牛、ヒンドゥー教の神輿やインド象、鎌倉大仏(!)、バイソンなど。つまりは「世界の車窓から」に冒険劇をつけたような情景になります。
そして音楽はサッポロビールのCMで使われ続けているので、みんな「ああこれか!」となります。

歴史的なことを言うと、スエズ運河・アメリカ大陸横断鉄道・インド鉄道が完成して遠回りせずに世界を回れる、第一次世界大戦が始まる前の比較的平和だった時代なのがミソですね。昔は戦争ばかりだと思っていたけれど、こういう時代もあったんだなぁ…。

また、刑事が「香港を過ぎるとイギリスじゃなくなってしまう」と焦るセリフも印象的です。そうか、この時代はインドも香港もイギリスなんだ…!

当時の有名人がたくさんカメオ出演しており、映画の最後に「さてだれがいつどこに出たでしょう?」という字幕と共に、かわいいエンディングアニメーションが始まる。
今見ても最高にオシャレなエンディングだ。

なんかもう、非の打ち所がないですね。見て良かった。