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インサイダーのmasayaanのレビュー・感想・評価

インサイダー(1999年製作の映画)
3.5
これもまた...しくじる男たちの物語だ。勝利を目前にして、必ずと言っていいほど男たちはしくじってしまう。裏切り、欺き、あるいは暴力によって。マイケル・マンの、ヒロイズムへの警戒心がそうさせるのだろう。男たちの倫理観や、正義感は、疾走を続ける中で、いつしか男と男の仁義へと変貌していく。

途中、金と名声欲に屈するやつもいる。なら、こっちは屍を越えていくぜと。やってやろうじゃねーかと。ドンパチはないが、常に銃撃戦の予感は漂っている。そして最後は、お約束の「死闘編」へと突入するのだった。マイケル・マンのテンプレートは、いわばリベンジ・イズ・ザ・ベスト・リベンジの美学だ。復讐に勝る復讐なし!

転換点となる、WSJ編集者との夜の密会のシーンの気合いのこもったショットに思わずたじろぐ。特に、タクシーのウインドウ越しのショット。あるいはこの映画を美しく彩るのは、常に腹を括った男たちの接写だと言うこともできる。ものの批評によってはフィルモグラフィーのトップに位置づけられるのも納得の佳作。
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