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フォレスト・ガンプ/一期一会のpikaのレビュー・感想・評価

4.0
再鑑賞。
初めて見たときは無知も無知でただただ面白いなぁと思ってたんだが、歴史を悪意的に捻じ曲げているという批評を読んで描かれていないことに問題があるのかと、それを踏まえて見てみたけどやっぱりそもそもその歴史を知らない者が描かれていないものに気づくことはできないし、無知は恐ろしいけど、だからといってこの作品を見てそのまんまアメリカ史はそれだけなんだとも思えないし、知ってる人にとっては怒り心頭な作品なのかもしれないけど知らないなら知らないなりに別に恥ということもないのかなとは思った。
アメリカ史のなぞり方もシニカルなギャグ描写なので、単に娯楽として見ればファニーな面白さだけど裏の意図を慮る人にとっては怒りが増す要因なのかな。

フォレストのキャラクターは非現実的で、むしろ敢えてそう描いているように見えることから、人間ではなく何かの象徴なのかなと思いながら見ていて、真っ直ぐ流れのままに生きている感じは「信じる者は救われる」という宗教的な象徴なのか、アメリカ史をなぞりながら寄り添って成功していくフォレストのポジションを見ると、表立って「こうありたい」というアメリカの願望そのままなのか。
他のキャラクター陣もフォレストと同様に、葛藤や苦悩や嫉妬や羨望などの人間臭い、人間らしい感情は結果論として出てくるけど、表立っては描かれず、それに対して甘受しているところしか映されない。
全てのキャラクターに人間らしい感情描写がなく、記号化されたような、ステレオタイプ的なものに見えるのは彼らも全部何かしらの象徴なのか。

フォレストがアメリカの願望の象徴なら、現実的な結果に苛まれている周りの人々がフォレストを愛し、彼の存在によって救われているように見えるのは、確かにちょっと気持ち悪さもあるけど、演出も演技も展開も何もかもスマートで見やすく、飽きる隙なく楽しく見れてしまうので、内容云々は横に置いておいて娯楽作品としてはやっぱり面白い。

映画に対してどこを見て何を求めるのかで同じ作品でも多様な解釈があり、賛否があり好みがあるっつーのを最近噛み締めていて、キャラクターの背景や心理に深みが欲しい場合もあればドラマ自体や台詞の掛け合いに楽しさを見ることもあり、ショットや演出などの手腕に痺れる人もいるし、単に楽しさを堪能できて満足というのもあるし、見る人によって見るところや感じるところが違うから色々な意見が生まれて作品外の感想や影響に繋がり、単なる趣味を超え文化と呼べるような、集合体的な側面も持っている映画って奥深いし面白い。
他人の感想は参考になるだけでなくそういう面での楽しみ方や刺激にもなるんだと、作品には関係ないがアレコレ考えさせられるキッカケになった笑
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