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新選組のotomisanのレビュー・感想・評価

新選組(1958年製作の映画)
3.4
 何がほんとか分からぬ感じの千恵蔵組とその周辺。今回はチャンバラ映画というレベルでもなく、配役一覧では馴染みの役名が並んでてもどこに居たのか気付きもしない塩梅。なんでも、鞍馬天狗は実は薩摩の諜者で、杉作は男の子で、土方は鉄砲玉風、副長関兵庫?は堂々の脱隊の末長州勢に加担して池田屋で果て、一人勝ち近藤は土佐の月様と国論を交わし、互いに惜しむべき好敵手として袂別するという豪華カラー版で、"濡れて春雨"なのに池田屋で"今宵の虎徹は血に飢えて"いないのが不思議なくらいだった。
 そんな中、池田屋事件の前置きの祇園祭の宵山風景に月鉾があしらわれていた。今に比べて独自色の乏しさを夜目にも鮮やか錦と赤の胴懸で補う辺りに維新以来の苦節を感じてしまう。
 話の最後、鳥羽伏見に出てゆく近藤らを京都市民が見送る川っぺりではちょうちょが山ほどひらひらしていて今日も快晴。何だか勝利間違いなしという気分に、というか、1958年当時新選組が負けたなんて誰も知らなかったんじゃなかろうかという気になってしまった。
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