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スパイダーマン2のdeenityのレビュー・感想・評価

スパイダーマン2(2004年製作の映画)
4.0
スパイダーマン二作目。
一作目でMJの思いを知りながらも力を持つ者の責任として自分の気持ちに嘘をついたピーター。それがいかに辛い決断だったかはわかるのだが、本作の前半はまさにヒーローとしての苦渋のオンパレードだ。

日々の人助けで疲労が溜まっていることは当然のことながら誰にも打ち明けられるはずもなく、でも打ち明けなければ誰も知らないわけで、ピザもまともに時間通りに届けられなきゃクビになるは、大学でも勉強できてないから落第候補だは、家賃も滞納しまくり、親友からは恨まれるし、愛するMJとは約束を守れず離れていくし、踏んだり蹴ったりだ。

もうね、見ているだけで辛いんだわ。「おい、パーカー。言え。言っちゃえ。俺がスパイダーマンなんだって。俺が街の人を救ってるんだって。」何度心の中でそう思ったことか。かわいそうで、切なくて、思わず同情してしまう。
つまりスパイダーマンは観客が同情してしまうくらいで、憧れのスーパーヒーローではないのだわ。めちゃめちゃ庶民的な一人の男でしかないのだ。

サム・ライミがもし前半シーンで挟み込んだコメディー要素がなかったら、ゾッとする。グッとシリアスな展開にもなり得た。同じヒーロー物で言えばバットマンシリーズの二作目なんかも英雄の苦悩を描いているが、十分ああなる可能性もあった。ただ、やはりサム・ライミの作りたいヒーロー像とノーランのそれは違っていて、作品のタッチとしてはまだ笑いながら見てられるのが差別化でもある。スパイダーマンの方が製作は早いが、真っ向からぶつかったらスパイダーマンシリーズに分はない。
しかし共通なのはみんなのヒーローであるキャラクターにすごく同情してしまうような、感情移入しやすい点だ。見せ方は違えど、どちらのキャラクターも共感を得られるヒーローだと言える。

だからこそスパイダーマン二作目はズルい。そりゃ『ダークナイト』とは別物だけど、同じように突き落としといてそこからマスクを脱いで戦い市民を味方につけるは、MJにもベストな形で正体を明かすは、その上まさかの『卒業』的な展開に持ち込むし、親友との隔絶を一応本作の中では払拭されたと捉えざるを得ない終わり方を迎える。
めちゃめちゃハッピーエンドやん。ズルいズルい。そりゃがっつり同情してたから嬉しいけどさ、こうも理想的な事の運びがあるかいな。毅然とした態度で大切な物を諦める覚悟はどうした。全部手に入れたやんけ。結局ヒーローは何でも上手くいくってか。美女も抱けるってか。面白かったけどやっぱりそんなのズルい(笑)
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