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スパイダーマン2のトルーパーcomのレビュー・感想・評価

スパイダーマン2(2004年製作の映画)
4.5
サムライミ版スパイダーマンの第2作。
スパイダーバース公開タイミングで復習観賞。

従来DVDを持っていたけど、自宅にプロジェクターとスクリーンを導入したので今回ブルーレイBOXで買いなおした。
2はNYをスゥイングするスパイディが最も満喫できる作品なので大画面のフルハイビジョン映像に大満足。


【1】スパイダーマン2は傑作だ
■シリーズ物における「2」の重要性
洋画の人気シリーズは3部作で製作されることがとても多い。
スターウォーズ/BTTF/アイアンマン/ジュラシックパークetc
3部作がシリーズとして人気を得られるかどうか、は第2作の出来によるところが大きいと思う。

第1作でキャラクターや世界観の紹介をすでに済ませているため、オープニングから物語を一気に展開したり派手なシーンでスタートできるというメリットは大きく、限られた尺の中に、多数の要素を盛り込むことが可能なのが「2」の最大のメリット。
反面、観客の喜ぶ要素を入れる方向に流れがちでもあり、単にファンサービスを連発した結果、物語が希薄になったり1の焼き直しになるリスクもはらんでいる。

「2」が傑作と呼ぶに値する作品になるかどうかは、「1」の世界観を土台に序盤から盛り上がるシーンを展開しつつも、「1」で見られなかったキャラクターの意外な一面や成長を描けるかどうかにある。
その点でいうと、本作『スパイダーマン2』は傑作と呼んでもよい出来に仕上がっており、ライミ版スパイダーマンの人気を現在に至るまで不動のものにしたといえると思う。

■ヒーローとは
1でNYのヒーローとなったピーター。
しかしヒーロー活動は多忙で、彼は私生活との両立に苦悩する。
マスクで素顔を隠して活動している彼のことを理解してくれる人は誰もおらず、次第に彼は疲弊していく。

苦悩の果てにピーターが下した決断は?
ヒーローとは/自分は何者なのか、そんなピーターの苦悩と成長を描いた本作は、彼と、彼の周囲の人物との関係を掘り下げており、シリーズ物の第2作として申し分のない傑作となった。



<以下、ネタバレあり感想>



【2】映像
■NYとスパイダーマン
シリーズ2作目となる本作では、最初からピーターはスパイダーマンなので、NYのビル街をスイングするスパイダーマンの映像がこれでもかとばかりに登場する。
第77回アカデミー視覚効果賞を受賞しています。

オープニングから、ピザを配達するくだりで摩天楼をグイングインとスイングする映像が炸裂し、劇場で思わず手を叩きそうになった思い出。
圧倒的な映像を見せつつ、子供たちを助けるシーンをしっかり挿入。
加えてバイトの仕事に失敗したり講義に遅刻する様子を見せることで、ヒーロー活動と私生活の両立に苦慮する彼の姿を描く。

派手な映像が、ただその映像を見せるためだけに存在するのは出来の悪い映画だが、本作は「2」で主人公の抱える苦悩を描くために物語と連動しており素晴らしい。

そして、中盤の挫折を経てカムバックしたスパイダーマン。
彼が戻ってきたことを示す場面で、再びNYの摩天楼を気持ちよくスイングする姿が描かれる。
当時としては圧倒的なCGの映像を大画面に映し出すことで、ダイナミックで心地よい映像の興奮が、ヒーローの帰還への興奮と重なる見事な演出。


■Dr.オクトパス
本作のヴィランは背中から生えた4本の機械アームを駆使するDr.オクトパス。
アームを駆使してダイナミックに移動する彼の姿もまた、当時のCG技術が最大限に発揮されていて秀逸。
銀行で硬貨のつまった袋を投げあうシーンとか素晴らしかった。

彼が登場するシーンでは、まずガシャンガシャンという重厚感ある機械音だけが聞こえてきて、ホラー映画のような描写が多い。
恐怖におびえる女性のアップ、的なショットを多用していて、ともすればマヌケに見えかねないこのキャラクターの脅威を見事に描いていたと思う。

もともと、サムライミという監督がホラー映画出身の人なので、このへんは本領発揮というところか。
彼の背中のアームを医師たちが切断しようとするシーンのホラー映画感は最高だった。

ちなみに、演じたアルフレッド・モリーナ氏はインディジョーンズ第1作のオープニングで、遺跡内でインディを裏切って黄金像を持って逃げるヤツの役で映画デビューしたらしい。
両者が同一人物だということを割と最近知ってびっくりしました。


【3】ストーリー
■ヒーローは大変だ
NYの街で日々発生する事件を解決するため、バイトで失敗/講義も遅刻/MJの舞台にも遅刻。
ヒーロー活動に忙殺され、私生活がめちゃくちゃになっていくピーター。

スパイダーマンはNYのヒーローだが、「私がアイアンマンだ」と公言したトニースタークとは異なり、マスクをかぶって活動するピーターを理解し励ましてくれる人は誰もいない。
切れてしまった公衆電話で、つながらない電話機からMJに対して弱気の告白をするシーンがとても切ない。

精神的疲弊から、クモの糸を自由に出せなくなったピーター。
苦悩の末、物語の中盤で彼はスパイダースーツを捨てヒーロー活動を廃業。普通の大学生としての生活を取り戻す。
それは束の間の平穏。NYの犯罪件数は増大したが、彼には平穏な人生が戻ってきた。

ところで、ちょっと下ネタ的になりますが、ライミ版スパイダーマンってクモの能力を男性の性機能と重ねてますよね。
ピュッと白いのが出たり、ストレスでED的に能力が減退したり。
「1」でMJがマスクを半分めくってキスをするシーンとか、変な目線で見えてしまうのであまり多くは語らないようにします。。


■ヒーローとは
敵であるDr.オクトパスが正気だったときにピーターへかけた言葉。
「知性は特権ではなく授かりもの(ギフテッド)だ。世のために使うのだ」
ノーベル賞級の頭脳をもつ博士は、自身の知性をギフテッドと語ったが、これはクモの力を授かったピーターへのメッセージともなった。

ヒーローを廃業していたピーターは、メイおばさんと隣人の少年の言葉から、街の人々がスパイダーマンを必要としていることを知る。

クモの力を授かったピーターにしかできないこと、彼の力がニューヨーカーたちを救い、希望を授けていたのだ。
大いなる力には大いなる責任が伴うが、授かった力を発揮することで、別の人々に希望を授けることができる。

ふつうの人間では火災から1人の少女しか救うことができないが、
スパイダーマンなら、何人もの命を救い、希望を与えることができる。

自身の使命を発見したピーターはスパイダーマンとしてカムバック。
暴走する列車を止め命を張った彼の姿を見て、乗客たちが彼をいたわるシーンは「1」の橋のシーンと並ぶ名シーン。
親愛なる隣人スパイダーマンは、NYの人々に心から愛されている。

アジア人のおばさんがスパイダーマンのテーマ曲をヘタクソな歌で歌うの好き🎻


【4】減点ポイント
1-3まで通してキャラが徹底しているので、今ではもうそういうものだと思えるようになりましたが、
やっぱりMJというキャラの行動がどうしても理解しきれず減点要素となる人は多いと思います。

スパイダーマンの正体を知り、彼の理解者となるMJ。
それだけでいいのに、なぜ助け出された後、駆けつけてくれた飛行士の婚約者としっかりと抱き合うのか。
スパイダーマンについていくなら、筋を通して婚約者と別れればいいのに、なぜ結婚式当日なのか。

飛行士の彼をもっとクズ野郎に描いていればまだしも、彼はなにも悪いことしてないし。
演劇を何回も見に来てくれたり、ラストで警察よりも早く彼女の元に走って駆けつけるなどめちゃくちゃいい人。
ウェディングドレスのまま走っていくっていう『卒業』的な絵を見せたかったのかなんなのかわからないけど、
「やっぱオレにはMJっていう人間は理解できないわ」って思ってしまう。

ピーター、悪いこと言わないから「家賃!」おじさんの娘のほうをオススメするよ。

まあ、それでも「そろそろ誰かがあなたの人生を救うとき」っていうセリフは泣けるけど。


【スコア】
★4.5です。
5点満点!と言いたいところだけど、
MJの行動に共感できないのと、ゴブリンがハリーの中で生きている、っていうくだりが意味不明なので△0.5で。
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