鋼鉄隊長

ゴジラの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

ゴジラ(1954年製作の映画)
4.9
塚口サンサン劇場にて鑑賞。

【あらすじ】
ある日、貨物船栄光丸が原因不明の沈没事故を起こす。生存者を救出した大戸島では、長老が伝説の怪獣「呉爾羅」の仕業だと語る…。

言わずと知れた、怪獣映画の金字塔にして戦後日本特撮の原点。
この作品が数多の怪獣映画の中で異彩を放っているのは、ドラマと特撮が共にいつまでも色あせない一級品であるからだと思う。
まずはドラマ部分。『ゴジラ』のドラマ部分は自衛隊の交戦よりも市民の様子に尺が割かれている。派手な戦闘で無く恐怖に怯える人々を中心に描くことでゴジラの恐ろしさを表現しているのだ。特に大戸島の尾根からゴジラが首をもたげて姿を現す場面では、人々の怯える様子が丁寧に表現されており、バラバラに逃げながらも人々の視線がゴジラに一致しているのが面白い。そして本多監督の作風でもある、警官は警官の仕事を、科学者は科学者の仕事をひた向きにこなすといった「実直な人物描写」が印象的に観られる。その最たる例は、テレビ塔の上で決死の実況中継を行うアナウンサー(橘正晃)だろう。怪獣を前にして十人十色の言動を見せることで、上質なパニック映画に仕立てあげている。
次に特撮について。ゴジラの破壊描写は二段階に区別することができる。高圧電線による防衛線をゴジラが突破するまでは、ゴジラの攻撃は白熱光が中心。白熱光を受けて水飴のようにドロドロに融け落ちる送電線の様はとても美しい。しかし、鳥籠を手前にしてゴジラが映るショットが挿入されてからはゴジラは恐怖の大破壊を繰り広げる。松坂屋を叩き壊し、国会議事堂を粉砕、勝鬨橋をひっくり返して東京を焦土に変える。段階的に破壊の様子が変わったことは、鳥籠から解き放たれることでゴジラが「恐怖の大王」という真の姿を見せたとも考えられる。
このようにドラマと特撮が互いを高めあっているからこそ『ゴジラ』は怪獣映画の最高峰になったのである。これは偏に本多猪四郎監督と特撮の神様円谷英二の演出が見事に組合わさったからに他ならない。
数えきれないほどDVDで観た作品だが、リバイバル上映を観たのは今回が初めて。こんな素晴らしい作品を劇場で観ることができて本当に良かった。塚口サンサン劇場さん、ありがとうございました!

(余談:『ゴジラ』をより楽しむには)
現在、ニコニコ動画にて「恐竜で見る特撮の歴史」という、世界の特撮史を簡単に楽しむことが出来る動画が公開されています。こちらの動画を観れば、『ゴジラ』の特撮がどれほど優れているのかが一目でわかると思います。
とても素晴らしい動画だったので紹介しておきます。
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