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ある殺し屋のcatmanのレビュー・感想・評価

ある殺し屋(1967年製作の映画)
5.0
1967年公開。市川雷蔵主演×森一生監督×宮川一夫撮影というラインナップで、しかも和製ノワールと聞けばもう観るしかないヤツ。で、これがまためちゃめちゃ面白い。
普段は寡黙な小料理屋のオヤジ、しかしてその正体は表情ひとつ変えずに畳針1本でターゲットを仕留める凄腕の殺し屋、というのが雷蔵演じる主人公。虚無的でニヒルなキャラクターは眠狂四郎と共通するところがあって、しっかりと彼の持ち味が発揮されている。幕開けから数分間ほぼセリフが無く雷蔵の仕草とカメラワークだけで見せるアバンタイトルが最高。セリフと説明が少ない映画が好きだ。
時系列を並び替えながら現在と回想を交差させるという巧みな展開が80分強という短い尺に無駄なくソリッドに収められているのが素晴らしい。必要最低限の登場人物、成田三樹夫や野川由美子ら共演者もキャラクターが活き活きとしていて魅力的。ただ小林幸子のフィーチャーのされ方だけは不自然なんだよな。大映の意向なんだろうか。座頭市でもそうだったけど、何かこの人の芝居は鼻につくというか、シラけちゃう。すみません。一方で出演シーンは僅かながら渚まゆみの美しさは特筆もの。マジ綺麗。
何処か欧州的な響きを感じさせるテンションを抑えたマイナー調の劇伴も良いし、宮川一夫の撮影は相変わらず冴えまくり。ロケーションも良い。やっぱ映画は画だよな
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