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ザ・キープのhorahukiのレビュー・感想・評価

ザ・キープ(1983年製作の映画)
3.4
ナチスドイツの小隊が防衛のために立て籠もった山奥の古城。そこには人ならざる「何か」が封印されていた…。

監督は『ヒート』『コラテラル』の巨匠マイケルマン。彼のフィルモグラフィーからするとかなり異質な本作。当時駆け出しで自由に撮らせて貰えなかったのか、3時間半の長編をバッサリ削って90分に収めてるらしいです。巨匠となった今、全力でセルフリメイクしてほしいですね。

あらすじ…
舞台は第二次世界大戦真っ只中のルーマニア。敵軍を迎え撃つため、ドイツ軍小隊がカルパチア山脈にある城塞へやってきた。その城塞は城内にいる何かを閉じ込めるようなおかしな作りになっていた。そして、内壁には無数の十字架。代々城塞を守ってきたルーマニア人に警告されたにも関わらず金に目がくらんだ兵士が、銀製の十字架を1つ外してしまう。その日からドイツ軍兵士が1人ずつ殺されていき…という話。

ルーマニアの古城。そして十字架といえばドラキュラですよね。本作は一応吸血鬼映画なんですけど、ルゴシやリーが演じたドラキュラのような紳士な見た目ではなく、筋肉ムキムキで青白い素っ裸のおっさん。目と口が赤く光ります。血は吸いません。ちなみにジャケのやつです。

描かれているのは善と悪の対立。悪を倒すために別の悪に魂を売ることは果たして善なのか。そして、悪同士の対比によって人間の悪を際立たせ、悪により虐げられた者がまた悪を生み出すという連鎖をも描いている。ただ、かなり描写が薄いうえに、キャラクターの内面の変遷がほぼ描かれてないので伝わりづらい。ここが本作がわけわからんと言われてる理由なのかなと。

ただ、映像的センスが冴え渡ってます。城塞深部の、無限に広がり吸い込まれそうな広大で真っ暗な空間。吸血鬼を覆い尽くす渦巻く煙。木っ端微塵に吹っ飛ぶ人間の頭。最終対決の舞台なんて、SFで描かれるディストピア化した近未来のよう。そして、本当なら人の悪心を象徴する場面のはずなのに、光をバックに走る神々しいシーン等、良いのか悪いのかわかんないけど、とにかくインパクト高めな演出が多い。

そして、何よりこの映画をカルト化してるのは徹底的な時代考証に基づいたドイツ軍の武装。戦車、軍服、銃等、完璧に再現されてるようでホラー好きというよりミリタリー好きに圧倒的に支持されてるそうです。マイケルマンの拘りを感じますね。良作とまでは言えませんが、すごく魅力のある作品でした♫
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