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カリスマのpikaのレビュー・感想・評価

カリスマ(1999年製作の映画)
4.5
見ていてタルコフスキーの「サクリファイス」や「ストーカー」がチラチラ頭をよぎるものだからオマージュなのかと深読みしてしまうし、キャラクターの台詞や行動も非常に意味深で、全てが哲学的な問いかけのように思える個人的にツボを刺激される映画だった。
黒沢清監督個人的ベストきたー!とワクワク見ていたのだが、見終わってこの映画に対してどう咀嚼していいのかよくわからない。

問いかけてはいるもののある程度映画の中で答えを提示していて、でもその答えは理路整然としていないから思考する楽しみを刺激されつつ、なんだかすんでのところで哲学映画にならない娯楽性があったりと、敢えてなのかわからないギリギリのラインがこの映画を好きなのかどうなのかという部分さえ難解にしてる気がする。
個人的にはそれをいい意味で捉え、見る毎に見え方や解釈が変わってきて新鮮な気持ちで映画を楽しむという娯楽性があり、それによって得られる解釈の折り合いが結果傑作だったり駄作だったりの感情に繋がる、という一定しない面白味が醍醐味なんだと思えた。

面白いのが黒沢清監督の作風なのだろうメロドラマのように音楽を用いるところで、カメラワークや演出は一貫しているのに音楽によってシーンのジャンルがコロコロ変わっているからとても掴み所がなくって面喰らってしまう。
例えようのない個性だからこそ戸惑うけれどそれは新鮮な刺激に直結しているから個人的にはとても好き。
突然ガラッと変わる展開や、ぶつ切りカット、多用するロングショットの中に別の映画のような空気を生み出し、思考させておきながら感情に訴えかける、わりと酩酊感のある刺激がクセになる。

レンタルDVDの画質と音声がどうしようもなく悪いのでリマスター再販されたら是非購入したい。
音量60にしたのなんて初めてです。汗
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