映画漬廃人伊波興一

瀧の白糸の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

瀧の白糸(1933年製作の映画)
4.7
この映画を同時代でご覧になった当時の観客たちは後にヒロイン入江たか子が鬼監督に「化け猫女優」と虐げられる姿をどのように捉えていたのか?想像するだけで恐ろしくなります。 溝口健二「瀧の白糸」

その時の相手が誰だったか忘れましたがその相手は溝口と共に入浴中、彼の背中の傷を見て息を吞んだそうです。
溝口曰く「これですよ。女に切られでもしなけりゃね、女なんて描けませんよ」
痴情のもつれか?あるいは娼婦に切られた傷でしょうか?

また映画のために娼婦たちの生活を調査した際、その実態に打たれた溝口は大泣きして世の男どもの非礼をまるで自分の罪の赦しを乞うが如く彼女たちに詫びたそうです。

さらに奥様が統合失調症だった溝口が女の生きざまを描くとなれば演じるヒロインが無傷でいられるわけがないのです。

個人的に芸術家の暴君伝説の殆どにおいて少しのエピソードが増幅して語られたものだと思い込んでいる私ですが溝口の鬼暴君ぶりは一部の誇張もない、と思っております