イランの小さな町で暮らす10歳の少年ガッセム。サッカーが好きでイラン代表の試合を見に行きたい一心で、様々な方法でお金をかき集める。そしてたった1人で試合観戦への旅に出るドラマ。
イランの名匠アッバス・キアロスタミ監督の長編デビュー作。ガッセムの何としてでも試合を見たい気持ちは理解出来ますし、ちょっとした冒険的な物語の運びにもワクワクするところがありました。
その裏では母からも父からも見放されている家庭環境。愛情に飢えて盗みなどを働いてしまうガッセムの姿に色々と考えさせられるものがありましたね。
そして紆余曲折を経て迎えるラストはかなり現実的。こんな事も有り得るよな…と思える結末で綺麗事のようなドラマに収まらない作品作りの巧さが感じられました。
ただの子供の冒険ものだけに終始しないのは、やはりデビュー作からアッバス監督の持ち味がしっかりと確立していたと感じます。1時間そこそこの短さですが、物足りなさは全くありません。