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新仁義なき戦いのblacknessfallのレビュー・感想・評価

新仁義なき戦い(1974年製作の映画)
3.3
仁義なき戦いは実際のとこ笠原和夫さんが脚本した4作目"頂上作戦"で完結してるわけだけど、ヒットの余勢、会社の強い要請で"完結編"が作られた。これも蛇足に過ぎない苦しい話の展開だったのに、さらに新シリーズまで開始されるなんて、当時どれだけ仁義シリーズがドル箱だったが伺い知れるよね。

その新シリーズの1作目なんだけど、これ、話はまんまん旧シリーズというか、オリジナル1作目のトレースなんだよね。
呉が舞台だし金子信雄さんなんて今回も山守のおやじだし笑

同じことをやるにしても新鮮味も必要ってことで色々工夫はしてる。
山守を追い落とすオリジナルで言うとこの坂井の鉄ちゃんに当たる役の青木を若山富三郎、広島市の有力親分役に安藤昇、ビックネームを入れて豪華さを打ち出してる。

そして既存のキャストにもオリジナルの違いを意識した演出が施されてる。
主演の文太さんは山守と青木の間で翻弄されるオリジナルと同じ立ち位置なんだけど、性格がかなり違う。オリジナルは行き場なくし偶々極道になっただけな自分に褪めてるとこがあり、争いを好まないキャラだったけど、今回はかなり血気盛ん。
オリジナルでは坂井の鉄ちゃんを殺すことに躊躇い、成し遂げられなかったげど、今作では山守に頼まれ断るけど、青木の増長と自身の野心に駈られて青木を殺る笑
極道らしいと言えばそうなんだけど、理知的で情に厚く無私な心があり、悩める極道としての魅力は微塵もない笑
ここのとこオンタイムで追ってた人はどう思ったのか知りたい。

それとキャラのデフォルメが激しい。
山守は私欲のみのずる賢い古狸なのは一緒なんだけど、青木が服役中に彼の女を寝取る。
このシーンがなかなかエグくて「わしには金があるけんのう」とか言いながら札束片手に青木の女に挑みかかる、、笑
俗悪さが何割り増しにもなってた笑
同じく卑怯者キャラ、槇原にあたる坂上を田中邦衛がやってんだけど、これも小悪党っぽさと姑息がパワーアップしてて、山守にも青木にも状況しだいでペコペコする。
基本そんなキャラだったけど、オリジナルでは一応、山守一筋みたいなポーズは取ってたわけで、今回はそれすらない笑

そして極めつけは新キャラの八っちゃん。
宍戸錠演じるこの八っちゃんは組の中でも勇猛果敢で周りから一目置かれてた存在なんだけど、梅毒に脳を犯されて、知的障害になってる。
完全に子どもというかピュアになっちゃってて、終始弛緩した笑顔でニヤニヤして本能赴くままに行動するスペシャルな人になっちゃってる。
そして、この設定、別に話に有機的に絡んできたりとかそんなこと全然ないんだよ。
まさに目先の変化だけのために作られた役なんだよ。
宍戸錠さんが気の毒になったよ。"完結編"での哀愁漂う大友を観てるだけに、次作でこんな役をさせられるなんて、、笑

とにかく、旧シリーズより凄いってことを印象付けようとすることに拘るあまり、無闇にキャラがデフォルメされてインパクト重視になり、深みやダイナミズムが全然ないんだよ。
違いを見せようと、文太さんに池玲子さんを恋人役にあてがい恋愛パートも入れてるけど、これも本当に入れてるだけって感じで笑

劇中、文太さんの舎弟が文太さんにあるシーンで「まるでマンガみとうで、わしゃあ、やってられんとです」と愚痴るんだけど、それはこっちのセリフだと言いたくなったよ😂
良質な文学だった仁義なき戦いを雑にコミカライズされたみたいで😂
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