何とも人を食った邦題だけど、知る人ぞ知る捕虜収容所ものの傑作コメディである。
この手の作品では「第十七捕虜収容所」という名作があるが、それに次ぐぐらい面白い作品だと思う。
そしてシンプルで鮮やかな脱出劇は「生きるべきか死ぬべきか」の大芝居を彷彿させる。
ドイツの最新兵器の調査というチャーチル首相の命を受けた天才科学者アーネスト・ピーズ卿。身分を海軍情報部付大尉と偽って敵地へ偵察に行くも、あえなくドイツ軍に捕まってしまう。
身分がバレてしまえば英軍の機密情報を引き出そうと恐ろしい拷問が待ち構えているに違いない。
捕虜収容所に送り込まれたピーズ卿は何とかして脱出して英国に帰国しようと企てる。
捕虜収容所だけにかかわらず刑務所とか閉鎖された環境が舞台になってる作品の醍醐味は次の二点ではないかと思う。
脱走方法の鮮やかさ、そして登場人物たちの疑心暗鬼によって生じるサスペンスである。
「第十七~」のウィリアム・ホールデンは看守と平気で取引したりして、要領が良すぎるあまりドイツのスパイと勘違いされ、収容所内でとうとう孤立する。
本作品の主人公ピーズ卿も、周囲の英軍捕虜に己の身分を明かしてしまえばかえって危険が迫るのでひた隠しするが、それがかえって仲間から怪しまれる。
そもそもこのピーズ卿、天才ゆえにかなり癖のある性格で、偏屈で尊大で愛想ひとつ言わないような人物だから、余計に仲間から嫌われている。
「わしは絶対に間違いを犯さない」と真顔で言えちゃうぐらいの自信家で、事実、この人本当に間違いを犯しません。
それでいてラスト、ずっと仏頂面だったピーズ卿が心からニコッと笑うシーンが何ともたまらない。
こういったキャラクター造形の妙味が本作を傑作たらしめる点だと思う。
主演のピーズ卿を演じるのは、「ナバロンの要塞」「チキ・チキ・バン・バン」でチョイ役ながらあご髭が印象的なジェームズ・ロバートソン・ジャスティス。
あと女好きで口ひげが印象的な捕虜仲間を演じるのはレスリー・フィリップス、この人はハリー・ポッターの組分け帽子の声の人です。
かなりオススメの作品ではあるけれど、廉価版DVDは出ているものの、これもまたなかなか手に入らない一本である。
■映画 DATA==========================
監督:ケン・アナキン
脚本:ジャック・デイヴィス/ヘンリー・ブライス
製作:ジュリアン・ウィントル/レスリー・パーキン
音楽:レッグ・オウエン
撮影:アーネスト・スチュワード
公開:1961年4月20日(米)/1962年3月10日(日)