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堂堂たる人生のakrutmのレビュー・感想・評価

堂堂たる人生(1961年製作の映画)
3.8
玩具作りに熱意を燃やす青年社員と、オフィスガールに憧れて強引に入社した寿司屋の娘が、倒産の危機に瀕している玩具会社の再建を目指して奮闘する姿を描いた、サラリーマン小説の名手・源氏鶏太の同名小説を原作とする、牛原陽一監督の青春コメディ映画。ちょうどこの頃は、引退した北原三枝に代わる石原裕次郎の相手役として、芦川いづみが連続して起用されていた頃であり、本作は『あいつと私』の次に公開された裕次郎映画にあたる。残念ながらヒロイン役としての共演は長く続かず、小林旭と破局した浅丘ルリ子が裕次郎のヒロイン役に抜擢されてからは、脇役になってしまう。

源氏鶏太の小説が原作ということもあり、見ていて安心感があるし、程よいコメディ感も好感が持てる佳作である。一方で、石坂洋次郎の青春小説ながらも濃厚なテーマを盛り込んだ『あいつと私』や、前年に公開された中平康監督によるハイテンポな軽快コメディ『あした晴れるか』に比べると、薄味でインパクトに欠けるのは否めない。石原裕次郎にしても芦川いづみにしても相変わらず好演技ではあるが、強く記憶に残るようなシーンがほとんどないのは残念である。ヒロインの恋路を邪魔するライバル役として多く出演している中原早苗も、主役同様にインパクトが薄い。

そんな中で印象に残ったのは、二人でチキンラーメンを食べるシーン(いずみちゃんに作ってもらうだけで、熱が出てしまいそう)くらいか。明らかに日清食品とタイアップしているようで、チキンラーメンを食べるシーン以外にも、道端に止まったチキンラーメンの宣伝車が長く映るシーンもある。

主役の二人がややあっさり目であるのに対して印象に残ったのが、脇役の俳優たちである。元祖インチキ外国語を披露する藤村有弘や冴えない社長役の宇野重吉などの常連はもちろんのこと、桂小金治、清川虹子、東野英治郎、浦里はるみなども良い味を出している。特に、浦里はるみが演じた裕次郎を誘惑するバーのマダムというキャラは、裕次郎映画であまり出てこないキャラなので、なかなか新鮮であった。
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