こたつむり

アンノウンのこたつむりのレビュー・感想・評価

アンノウン(2011年製作の映画)
3.5
降水確率30%のような作品。
降るも降らぬも自分で判断する境界線。

某書籍でミステリ映画として紹介されていたので観賞しましたが…個人的には、羊の皮をかぶった狼ならぬ、サスペンスの皮をかぶったアクション映画と喩えるのが一番しっくりくる作品でした。ただ、当然のことながら、受け取り方は千差万別。人によってはミステリなのでしょう。

と言うか、本作の場合。
自身の観賞スタイルによって評価が大きく変わる作品だと思います。だから、脚本の矛盾とか、首を傾げてしまう人物描写とか、非合理的な展開とか…そういう細かい部分を気にせずに、物語に流されるように身を任せたほうが楽しめると思います。自動運転ならぬ自動鑑賞ですな。

ただ、その場合のリスクとして。
観賞後に何も憶えていない可能性はありますよ。自分で運転しないと道を覚えない…というのと同じですね。僕も一ヵ月後には完全に忘れていると思います(記憶力の低下が最大の理由ですけど)。

それにしても、本作は。
『エスター』のジャウム・コレット=セラ監督作品ですが、やはり美味しい部分を捨ててしまう印象は変わりませんでした。役者さんの魅力を引出す手際は素晴らしいものがありますので、もっとサスペンスの本質に迫る演出にしてもらえれば…かなり脳汁が垂れる作品になったと思うのですが…。

例えば、本作の場合。
ドイツが舞台ということで旧東ドイツの秘密警察“シュタージ”が絡んでくるのですが、その設定を上手く活かしてほしかったです。主人公の“自分の記憶を疑う”設定ともども、本当に惜しい限りです。

まあ、そんなわけで。
なかなか難が多い作品のように思えますが。
映画は楽しんだもの勝ちですから、脳内ツッコミスイッチはオフにして臨むのが吉です。また、似たような他の作品と比較することもお薦めいたしません。トレッドストーン計画なんて本作に存在しませんよ。

そして最後に。
ドイツの植物学者役をセバスチャン・コッホが演じていましたが、僕の中では、この方が出演しないと舞台がドイツだと思えないほどに定着している役者さんです。ちなみに彼が主演級で活躍する『ブラック・ブック』は傑作ですので、本作で彼に興味が出てきましたら…そちらも是非。

と、彼に肩入れするのは。
元職場の上司に似ているから…という個人的なお話。
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