夏来

ぐるりのこと。の夏来のレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
4.6
数年前に鑑賞して、その時もリリーさんに恋をするきっかけになるくらい惚れこんだ作品なんですが、「恋人たち」を鑑賞してから観ると、もう愛おしすぎて走り出したいくらいです。とある夫婦を描く、とてもクローズな群像劇。まるで二人の守護霊になったかのような近さが生々しく、窮屈で、だからこそ深く深く、ふたりを愛してしまう映画でした。

法廷画家として社会を見つめていくカナオと、とある事件をきっかけに心を疲れさせてしまう翔子が、それでもなんとか二人の未来を模索していく姿が、橋口監督らしい自然な会話劇で形作られており、そのセリフにいちいち心を掴まれました。
序盤のふたりの住む部屋での掛け合いの中で、リリーさんが「決断力あるなあ、好き」って言うシーンがあるんですが、凄くないですか。超何でもないシーンなんですよ、でも集約されてるの、カナオのテキトーさとか、禿げ散らかしてるのにモテる感じとか、翔子がもう!ってなりながらも惚れぬいてるとことか、そのセリフだけでわかるの。なんだこれ、ですよ。
そういういちいちが、この映画の中で「人間」を作り上げていくから、なにかあって傷付けばいっしょになって傷付くし、救われれば救われていく。凶悪事件の、ともすれば特殊に見える人間の当たり前の肉声にはっとさせられたり、癒えたように見えた傷から血が流れていたり、もどかしくて、胸が苦しくなる。そんでもって、ラストシーン。祈るようなあのシーン。
人間全部、どんなひとでもいろんなもん抱えて生きてるからできるだけ優しくしなきゃだめだぞ、って諭されたような気がしました。あとやっぱり、夫婦っていいね。