あーさん

ぐるりのこと。のあーさんのレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
3.9
何があっても人生をやめないこと
愛する人に寄り添うこと
前を向いて生きていくこと

今まで観た中で一番優しいリリー・フランキー。あまり好きではなかったが、カナオ役ですっかりイメージが変わった。翔子役の木村多江も良かった。
幸せな頃のたわいも無い会話やおふざけは役の上だけでなく本当の夫婦のよう。微笑ましい!

それが一変、ある不幸な出来事が二人に起こる。。気丈に振舞うがある嵐の夜、それは自分のせいだとカナオに向かって感情を爆発させる翔子。悲しみを押さえつけると怒りになる。地団駄を踏んでどうしていいかわからない…と泣き叫ぶ。「うまくやりたかった」「ちゃんとしたかったの」完璧主義の翔子だから、一人で抱えすぎて壊れそうになる。だがそこからのカナオは逃げなかった。妻としっかり向き合い、言って欲しかった言葉を不器用ながら口にする。これはなかなかできそうでできないこと。そしてこの日を境に夫婦は再生の道へと歩き出す。。

彼らを取り巻く人々は良く言えば人間らしい、悪く言えば自分勝手な人達ばかり。家族や親戚で集まるシーンはあるある過ぎて笑ってしまう。他人じゃないだけに距離の取り方が難しいのだ。倍賞美津子、寺島進、安藤王恵、職場の人に柄本明、寺田農、裁判所に出てくる人に光石研、田辺誠一、加瀬亮、新井浩文…脇を固める俳優陣の演技がまた光る。

1990年から10年間にいろんな事件が起こった。カナオが法廷画家の仕事をするという設定だからリアルな事件が登場する。凶悪な事件が続く中で私が一番印象に残ったのはお受験を巡り普通の主婦が起こした自分の子の同級生を殺すという事件。これは子どもを持つ女性なら誰しも背筋が凍ったのでは…。いつ、誰が、どちらにもなりかねない危うさを象徴した事件。ノーメイクで地味な主婦役の片岡礼子が法廷で謝り続ける姿が痛々しかった。
だけどこの時代だけが特別ではない。阪神淡路大震災後また東日本大震災が起こったし、幼い子どもの命が喪われる事件は今も後を絶たない。世界中でテロ事件が頻発している。事件も事故も災害もなくならないのだ。
私達にできることは、常に起きたことを受け入れて前に進んでいくことしかない。時間はかかっても…。

ラストは二人を繋いでくれた絵がまた再び二人を固く結びつけてくれる、大好きなシーンで終わる。
希望という文字が浮かんだ。

追記
この作品はバリアフリーの方でも観られるように音声解説と日本語字幕が付いていた。嬉しい配慮!