踊る猫

ぐるりのこと。の踊る猫のレビュー・感想・評価

ぐるりのこと。(2008年製作の映画)
4.6
橋口亮輔作品はまだまだ観ていないものが多いのでなんとも言い難いが、時流を敏感に捉えながら骨太のヒューマン・ドラマで魅せて行くあたり、見事だと思う。逆に言えばその時流を捉える視点はややもすると表層的な「イマドキ」に便乗してみただけの、観客に媚びるものとしてだけ作用してしまうのだけれどこの作品でもそうした地下鉄サリン事件や宮崎勤、宅間守を連想させるモデルを使いながら、底にあるのは犯罪者の心理を通して人間の存在の根源を垣間見ようとする姿勢なのではないか。とは言え堅苦しいところばかりではなくてリリー・フランキー氏の柔らかい演技(この人が主役を張れるとは!)が生み出す独特の円やかさもまた観どころだ。この作品も「あざとさがない」と言えば嘘になるが、それでも途中からグイグイ引き込まれてしまった。
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