優しいアロエ

アウトサイダーの優しいアロエのレビュー・感想・評価

アウトサイダー(1983年製作の映画)
3.8
 貧困層の不良グループ“グリース”と富裕層グループ“ソッシュ”との抗争。YA(ヤングアダルト)三部作の一作目に位置づけられ、70年代の大作群からは強烈な振り幅を感じさせるミニマムな青春映画となっている。

“Stay gold.”「黄金であれ」

 主人公ポニーボーイとジョニーは、14〜16歳の垢抜けない少年だが、家庭事情などを理由にダラスら不良グループとつるんでいる。2人には何か目的があるわけではない。自分の居場所を求めて逃げ込んだ先が“グリース”であっただけだ。

 だから、心の中では良い悪いの分別はついているし、悪事に手を染めるだけの勇気もない。彼らは誤って敵対する“ソッシュ”の一人を殺してしまい、その道の恐ろしさを痛感する。そして、火事になった小屋から子どもを救い出すことをきっかけに、人生の価値を悟りはじめる。

 この火事のシーンは『グレイテスト・ショーマン』のそれとは異なり、非常に重要なものとなっている。その場では必死の行動だった善行が、人生の肯定へとつながったのだ。俺の人生も捨てたもんじゃあないな。自殺してしまうのは勿体ないのだと。

 「黄金であれ」とは、ブロンドに染めた髪を二度とベタベタのグリースヘア(=不良を象徴する)には戻さないという思いであり、同時に夕日を見たときのような感動を忘れてはいけないという思いである。黄金のような素晴らしい経験。それを覚えている限り、自分にももっとマシなことができるのではないか。ジョニーはそう悟ったところで、皮肉にも命を落としてしまう。

 大人と子どもの中間を漂い、人生を模索する若者たち。猟奇殺人マシンと化した今に比べれば随分可愛いマット・ディロンやチョイ役のトム・クルーズの初期の作品としても記憶に留めたい。
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