カタパルトスープレックス

キートンのカメラマンのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

キートンのカメラマン(1928年製作の映画)
4.2
バスター・キートンが自分のプロダクション会社からMGMに移籍して作られた第一作目です。これまでのアクション中心の喜劇ではなく、ドラマ中心の喜劇となっています。クライテリオンのリマスターされたBDで鑑賞。

MGMに移籍してから作風が変わったと言われるキートン。そして、自分のやりたいことができずに移籍を大変後悔したと言われるキートン。ただ、少なくともこの第一作目はいい変化だと思います。

バスター・キートンは体を張ったアクション喜劇が得意で、それを前半と後半のハイライトとするのがいつものパターンでした。すっごく面白い場合もありますし、あまり盛り上がらない場合も(ボク個人的には)ありました。つまり、ホームラン狙いでヒット率はあまり高くない印象です。たぶん、MGMのプロデューサーも同じことを考えたんじゃないかなあ。もっと確実に当てていこうよと。それがドラマ中心の喜劇なんじゃないかと思います。

舞台はニューヨーク。バスター・キートンはティンタイプ(鉄板写真)の街頭カメラマン。簡単なカメラで格安の値段でスナップ写真を撮ることを生業としています。そこでイベントがあり、取材で多くの人が集まります。その中の一人のサリー(マーセリン・デイ)にキートンは一目惚れ。サリーが務めるMGM Newsでカメラマンとして雇ってもらい、サリーに近づきたいと想いを寄せるキートンだが……という話です。

まず、これまで以上にキャラクター造形がしっかりしています。いつものバスター・キートンが演じる主人公のようにシャイで誠実な人柄で、ヒロインもそんなキートンに惹かれていきます。キートン映画のテンプレ的な展開。しかし、これまでの作品ではキートンの行動に???と思う部分も少なくなかったです。一貫性がないため、あまり深く共感できなかった。まあ、メインはアクションなので、キャラクター造形はそこまで注意深くしていなかったと思います。今回はアクションを抑え、ドラマ性を高めたため、キートンのキャラクターがより鮮明になりましたし、ヒロインのサリーがキートンに惹かれる理由も説得力があります。

そして、何より喜劇として面白かった。普通に「クス」っと笑いました。大爆笑ではないですよ。ぶっちゃけ、これまで観たキートン映画で笑ったことはなかったです。「へー、すごいなあ」とは思いました。でも、笑いって経年劣化しやすい。笑いの感性ってどんどん変わっていくから。まだ、喜劇として賞味期限切れしていないのも本作の特徴かと思います。