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どぶのRのレビュー・感想・評価

どぶ(1954年製作の映画)
4.2
全く見る気の起きないタイトルの映画を見てみよう第一弾。どぶ、て。どんなタイトルよ笑 見てみると隠れた名作でした、ただ結構見るのしんどい。戦後少々たって、社会問題が無数に起こり、庶民がすさまじい貧困に喘いでいた頃の話。ストで仕事のなくなった徳さんはある日、道端で腹を空かせて倒れてる知恵遅っぽいツルという女にパンを与えてやる。すると、ツルは徳さんを追って家までついて来てしまう。ツルを演じてるのが乙羽信子という人で、少々頭のおかしい常にハイな演技がめちゃめちゃリアル。いつもアヒル口以上に口を尖らしてへんな顔して、完全に何もかんも捨てて演じてる。この時代の女優は覚悟と気合と度胸がほんとスゴい! いまはこんな演技だれもできんでしょ。見てるのシンドイけどな笑 徳さんは、河童沼と呼ばれる川岸にいくつか立ってるボロボロの家のひとつに、ピンちゃんという男と二人暮らししてて、そこでツルとのおかしな3人暮らしが始まります。男たちはろくに働きもせんと(ってか時代的に仕事ないのかな)ギャンブルに熱中してて、ツルを売春宿に売りつけたりするんやけど、結局そこで問題起こして借金が残り、駅前でオッさんに体を売って、借金返しながらふたりの生活も支えてやる、って流れ。本作を見るにあたっての注意点としては、DVDの音質が非常に悪いため、最初みんな何言ってるのか分かりません。まじ外国語。15分くらい見て、やべーな、今んとこ何とか分かるけど、このまま見続けれるかな?と思って字幕ボタン押してみたら、何と!日本語字幕出てきた! 必須! で、終盤までは、面白いシーンありつつも、貧困層のボンクラどものだらしない生活とツルのおかしさ炸裂が延々と繰り広げられるので、気力消耗。とはいえ、川岸のボロ屋に住んでるいろんな人の様子とか見てると、すげー、こんなどうしようもない生活が、当時はふつうにどこにでもあったんやなーって、感慨深い気持ちになります。まぁいまでもぜんぜんあるんやけど。てか、今後またこういう貧しさが増えていくんだろうなー。現代は、いっしょに苦しみを分かち合える人すらいない、というさらに恐ろしい現実が待っていますが…とかいろいろ考えながら見てました。で、そのぼろっちい家々が開発のために取り壊しになるんで出てってくれってことでさらに追い打ち。それでもツルは陽気に体を売り続ける。誰にも打ち明けてない秘密を胸に…。すべての伏線が一気に押し寄せ、何もかもが崩れていくクライマックスは狂気の表情とモンタージュで、鳥肌立つほどの怖さ。迫力がすごくてドキドキしたし、その後の、まさかの悲しみのシーンは胸が痛むとともに、ムカつきもします。今さらおせぇんだよ! びーびーびーびーわめくなーーーーー!!! まぁでもこの世界は、失ってしまうまで大切さが分からない、という真実で埋め尽くされてる。こういうの見ると、自分の宝物はシツコイくらい大事にしないといけないな、ってめっちゃ思う。時々そういう思いに火をつける映画に出会えることはとても幸運なことだと思ってます。めちゃめちゃマイナーな映画やと思うけど、是非、字幕出して、前半頑張って見てみてほしい。最後は胸つぶれます。全く見る気の起こらないタイトル、まだ数本あるので、気分がのったら見ていきたい。のったらね。
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