コーカサス

こねこのコーカサスのレビュー・感想・評価

こねこ(1996年製作の映画)
4.0
僅か53歳の若さでこの世を去ったイワン・ポポフ監督が描いた猫映画の傑作。

美術大学卒業後グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍していたポポフのセンスと才能は、映像でも通用することを見事に証明した。

まるでオモチャ箱を引っくり返したような楽しさと心温まる物語、そして元サーカス団員で猫の調教師でもある“猫おじさんことフェージン”を演じたクズネツォフが手懐けた主役の猫たちは、どこまでが演技なのか、全てが愛くるしい。

一方、どんなに“コカ・コーラのロゴ”が街に広まろうと当時のロシアはまだ資本主義社会へ移行したばかりの暗い時代ということも忘れてはならない。

“逃げた猫を探す人、無事に帰宅する猫”

この至ってシンプルな物語の背景には、フェージンが地上げ屋マフィアに受けたような悲惨な仕打ちが現実にあり、一見夢のような物語の中から、実は深刻な社会問題を静かに発信している。

ともあれ、主役であるチグラーシャ、ジンジン、ワーシャ、イザウラ、シャフ、ペルシク、プショークに癒されることは間違いないだろう。

谷崎潤一郎の代表作「猫と庄造と二人のをんな」を堂々と頂戴している筆者のプロフィールも示しているように、愛猫家にとっては猫映画の決定版として永久保存したい名作である。

122 2020