モノクロでも伝わってくるキューバの美しさと国を擬人化して語り出すナレーションの美しさは序章に過ぎず、ストーリーが進むにつれ次第に怒りのボルテージが上がって来る。
買春する男とされる女、地主と小作人の関係は大国と小国の主従関係と重なる。自国が大国に服従を強いられる屈辱と遣る瀬の無い怒り。
その怒りを様々なアングルでカメラがとらえる。個人の怒りはその表情をローアングルで映し、またある時は怒りを感じている人間の視点、そして群衆の怒りは俯瞰したアングルで撮っている。各々の怒りがどうしたら受け手に伝わるか、一つ一つの構図が丁寧に練られている。
カメラマンのセルゲイ・ウルセフスキーはタルコフスキーにも影響を与えているそうで、『僕の村は戦場だった』の空撮や叙情的なシーンは確かに似ているかも。でも本当どうやって撮ったのかすごく気になる…。
内紛を扱った作品は良作が多い中、この作品はカメラワークで一歩も二歩も抜きん出る傑作でした。