てっちゃん

ファニーゲームのてっちゃんのレビュー・感想・評価

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
4.5
お初のミヒャエルハネケさん監督作品。
ハネケさんといえば本作が有名だというのと、なんだかすごいぞという噂を聞いていたけど、観れるコンテンツがないじゃないのと、憤慨していたら、観られる機会到来やんけ!ってなったので、震える右手を静まらせることに苦労しながら、再生開始。

いやあ、これはなんと言えばいいんでしょうか。
間違いなく自分の好きなやつなんだけど、これいいっすよ!って勧められない感じのやつ。
こっそり耳打ちして教えたいけど、教えたら嫌われるからやめとこうって思うタイプのやつ。
だから1人悶絶しては、はあはあしながら再生ボタンを押してしまうやつ。

本作は、”意図的に”悪い方へ悪い方へとつくりこまれている。
それを念頭に置いて観てみると、ハネケさんの完璧主義者と同時に憎たらしさと美意識が襲ってきて、なんなんだこの作品は、、、と驚愕してしまう。

「お前らが思っているようにはしねえぞ」、「お前らと遊んでんだぞ」、「これで面白いって思った時点でお前は同類だ」、「俺は俺のやりたいことをやる」などと言った言葉が聞こえてくる感じ。

トムとジェリーなどの比喩会話が笑えるけど笑えない。
なにこの感じ。面白いことを言っているんだけど、その人が面白いと思って言っていないというか、”ズレ”があるから笑えない。そんな感じ。
だから要所要所で笑わせにくるけど、全く笑えない。
それが不快の要素のひとつであるし、このような表現ができてしまうことに、センスの塊しかないと感嘆してしまう。

印象的なのは、見せない恐怖、行為。
ゴアエログロとかって見せるから感情にくるもんだと思っていたけど、本作はそれらを極力見せない。というか”見させない”。
そこに徹底しているから、観ている側は想像するなり、どうなってんだよってやきもきする。
ここにもセンスの塊を感じる。

有名なリモコンシーン。
理不尽だよな、悪趣味だよな。
「どうせ作品なんだから、どうとでもできるだろ?なにほっとしてんんだよ」とハネケさん。
「ここでああしていれば?そんなん知るか。これは作品なんだぞ」とハネケさん。
これぞ、超暴力(「時計じかけのオレンジ」を鑑賞以降かもしれんくらいの本物の超暴力)。
意味がない暴力。意味をなさない暴力。純粋な暴力。

役者さんたちも神憑りの演技。
これ大根役者さんがやっていたら、笑えたかもしれないけど、凄まじい演技によって高まりに高まってるところも特筆したい。

オープニング、エンディングが一緒なんだけどかっこいいな!
いきなりグラインドコア始まったやんけ!って驚いていたら、強烈な高音にびっくり。
これサックスなんだ。すげえな。

賛否両論はっきり分かれる本作だけど、私は衝撃を受けたし、ハネケさん作品もっと観たいと虜になったようだ。
それにしても、すごいもん観たな。
てっちゃん

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