マヒロ

ファニーゲームのマヒロのレビュー・感想・評価

ファニーゲーム(1997年製作の映画)
3.0
湖のほとりの別荘にバカンスにやってきた3人家族は、見慣れぬ二人の若者に突然拘束され、夜明けまで生き残れるかゲームをしようと持ちかけられる……というお話。

再見。
当時はハネケ作品も知らなくて、嫌な映画観たなという後味だけが残っていたが、その後色々観ていく中で輪郭がハッキリしてきたような気がしていて、今回改めて鑑賞してみた。
いたいけな家族に振るわれる暴力を、あくまで「観客のためにやっている」というスタンスで行う青年たちの行動は、普段アクション映画などで描かれる暴力を楽しんでいるこちら側をも巻き込んでくるような形になっており、こちらを不愉快にさせようという明確な意図が見える。
また、映画の支配者のように振る舞っている二人の若者も普通に返り討ちをくらって痛手を負ったりしていることから完璧な存在というわけでもなく、上位存在としての作り手や観客の存在を感じさせられる。

ハネケの映画としてはテーマも明確でかなり分かりやすい部類で、かなり鮮烈な描写も多いキャッチーな作品になっているが、それ故の物足りなさもある。
ハネケ作品の中で第四の壁の向こう側の存在を感じさせられる作品でいうと『隠された記憶』なんかも似たような形になっていたが、あちらの複雑怪奇な物語に呑み込まれるような怖さは無い。初見時は驚かされたグラインドコア的な音楽と共にオープニングタイトルが出るところも、ちょっとあざとさを感じてしまったかも。
創作上の暴力に対するアンチテーゼとしてはこれ以上ないシンプルかつ強烈なメッセージ性を持った映画だと思うけど、物語の楽しさや面白さにはもう一つ欠けるかなという印象だった。

(2022.192)
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