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しあわせの雨傘のEyesworthのレビュー・感想・評価

しあわせの雨傘(2010年製作の映画)
4.4
【飾り壺にも中身はある】

フランソワ・オゾン監督×カトリーヌ・ドヌーヴ主演の2010年のハートフルコメディ。

〈あらすじ〉
1977年、フランス。地方のとある町に暮らすスザンヌは、雨傘工場を経営するロベールを夫に持つ貞淑なブルジョワ主婦。優雅な毎日を送りながらも、美しく着飾り亭主関白な夫におとなしく従うだけの"お飾りの妻"に満たされないものを感じ始めていた。そんなある日、工場でストライキが起こり、ロベールと労働者側の対立がエスカレートしていく。ところがその最中、ロベールが心臓発作で倒れてしまう。かつての恋人でもある左翼の市長ババンに説得され、自ら経営を引き継ぐハメになったスザンヌだったが...。

〈所感〉
何年も前に一度見たが、オシャレで挑戦的で面白かった覚えがあるので再鑑賞。
出だしとラストが歌って踊るカトリーヌ・ドヌーヴということで、若き日の彼女の『シェルブールの雨傘』を彷彿とさせられる。フランスの国民的アイコンである彼女も年老いたが、変わらないチャーミングさで、年齢に合った美しさを見せてくれる。特に赤ジャージ姿というのは新鮮なのではないか。夫ロベールはどう見ても浮気がちな亭主で色々と問題を抱えているが、スザンヌはスザンヌで青春時代には色々と情事をやらかしており、花園のような秘密がそこにあった。そのせいで息子ローランは一体誰の子供なんだ?という事態が起きるとことかまさにフランス的コメディ。別に誰の子供でもいいじゃない?って軽薄な感じなのかな。家庭にぴたりと収まっている飾り壺でしかなかったスザンヌが、代理で工場経営を引き継いだり、市議会議員に立候補したりと、働く女性に変貌していく様は世の女性の希望に映るだろう。まぁ今の価値観的には、そこまで飾り壺であることを否定せずとも良いフェーズだと思う。それくらい家庭内での役割はかつてなく大きくなっていると思う。やり甲斐と情熱を持って何かに取り組む女性の姿はなんであれ美しい。フランス映画だからしょうがないけど情事や不倫が露骨に描かれすぎているのはちょっと苦手ではある。
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