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魔界転生のblacknessfallのレビュー・感想・評価

魔界転生(1981年製作の映画)
3.1
東映、深作欣二、山田風太郎、オカルト、魔術、復讐、暴動、ゴア、日本刀、好きなものだけで構成されてるのに久しぶりに観てもあまりパッとしないんだよな、これ。
ノレないと言うか。

天草四郎が江戸幕府への恨みから魔界の力に頼り転生し、この世に未練を残した剣豪達を仲間に引き入れ江戸幕府壊滅を目指す。

天草四郎役の沢田研二は妖しく退廃的な美貌はこの役にピッタリ。
メフィストフェレスのように次々に剣豪達等を魔界転生させる。
色気のある目線からバカ丁寧な口調で彼等の奥底に秘めた未練を引き出しそれを肯定して魔物にしていくシーンは悪魔的な魅力が鮮烈でグッとくる。
そして魔界転生させた剣豪達をチームにして計画的に動かすんじゃなくて、各々の欲望のままに行動させてカオスを起こし、結果的に江戸幕府にダメージ与えようとする作戦もアナーキーで素晴らしい。

ここまではいい感じなんだけど、いざ江戸幕府壊滅になってるとテンポがもたもたギクシャクしてきてテンションが下がってしまう。
原因は大物役者を揃えすぎたことだと思う。
宮本武蔵の緒形拳、柳生宗矩の若山富三郎、妖刀作りの天才刀鍛冶に丹波哲郎、この辺が役も重みがあるせいか異様に勿体ぶった演技が多くて大河ドラマみたいになってしまって失速する。
奇想天外な伝奇オカルト映画に合ってないんだよ、演技のフェーズが。
それに影響されてか柳生十兵衛の千葉真一まで妙に力んで重ったるい演技だし、、
剣豪役でよかったのは宝蔵院胤舜の室田日出男さんだけだね。
僧籍に入ったものの女性を痛ぶり殺したいという異常殺人欲に負けて魔界転生したシリアルキラーキャラをいつもの押出しの強さと下衆さを前面に出していかにも外道に堕ちた魔物って感じで見事に演じてた。
他の魔界転生した連中にもこの負のギラギラが欲しかったんだよ笑

こうなったのは深作欣二監督の資質が大きいと思う。ハッキリ言って深作監督はSFやファンタジーのセンスないよね。
「里見八犬伝」だってイマイチだったし「宇宙からのメッセージ」至ってはトンデモ映画として認知されちゃってるし笑

宇宙からのメッセージぐらいめちゃくちゃでナンセンスと勘違いが突き抜けてると逆におもしろいんだけど、魔界転生はそこまで狂ってはいないんだよな。

あと今回観てちょっとおもしろいと思ったのは、天草四郎が何回か名乗るシーンがあるんだけど必ずキリスト教徒首魁と言ってるんだよね。
魔界に頼り魔物になったのに自意識はあくまでクリスチャンてのが歪んでて興味深いと思った笑

それと「女囚さそり 第41雑居房」で梶芽衣子さんを喰う大怪演を見せた白石加代子さんを発見した。
天草四郎の魔術で発狂して暴動の火をつける狂女役。一瞬だけどあの独特の表情と発声でおっぱい振り乱して絶叫するシーンのインパクトは強烈だった😂
凄い人はちょい役でも爪痕残すね。
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