Arbuth

十二人の怒れる男のArbuthのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0
観てから10年近く経つが、未だにオールタイムベストの一本。

本当に優れた脚本と演者があれば、派手な演出やアクション、ロケ地その他一切が無くとも名作は作れる、ということを教えてくれた映画。

舞台はほぼ陪審員12人が集まる会議室一室と、その隣の小さなトイレのみ。凝ったカメラワークも無い。白黒だし、下手すればとても退屈な映画になってしまいかねない。

さらに、演者に(ほぼ)役名はない。陪審員は皆陪審員番号で呼ばれ、被告の少年も名前は出てこない。固有名詞は意図的に可能な限り排除されている。
だけど彼らは皆無個性な存在ではなく、むしろその逆。彼らは皆何かしら怒っている。暑苦しいまでにその怒りを画面のこちら側にぶつけてくる。

この映画は徹底した人間ドラマだと思う。人間を描くために、名前や舞台、カメラワークなど全ての余計なものを削ぎ落とした。

内容も大学で一応推定無罪の原則などを聞きかじったことのある人間として非常に勉強になった。

97年のリメイク版も好きです。ロシア版も観てみたい。
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