マヒロ

十二人の怒れる男のマヒロのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.5
父親殺しの罪で裁判にかけられた13歳の少年の判決について、十二人の陪審員が話し合うことになる。明らかに出揃った証拠を前にほぼ全員が有罪であると判断するが、ただ一人、陪審員8番(ヘンリー・フォンダ)だけは確実に有罪とは言えないとし、無罪を主張する…というお話。

劇中のほぼ全てのシーンが陪審員達のいる部屋のみで、別の場所の様子や過去の回想なども一切無く、十二人の男たちの議論だけで物語が展開していくという究極にシンプルな映画。元々が生放送のテレビ映画だったらしく、それを踏襲しているんだろうけどこの潔さはなかなか凄い。

基本おっさんばかりが集まっている登場人物たちだけど、実質主人公である8番以外も皆キャラが立っていて、日和見主義な人、証拠を基に理路整然と有罪を主張する人、どうでもいいから早く帰りたい人、人間観察が上手い人、何故か意固地になって有罪であると言い続けている人など、多種多様。
犯人を探っていくミステリ映画的な側面もありつつ、本題は実はそこにはないと思っていて、価値観の違う男たちがお互いの意見をぶつけ合いながら感化されあっていく様が一番の見所じゃないかなと感じた。

少年を有罪だと言っている人も(一部を除いて)決して悪というわけでなく、自分なりの考えをもってして有罪と言っているわけで、反対に最初から無罪を主張する人も確固たる自信を持って無罪だと思っているわけでもないので、何も情報を与えられていない観客からするとどちらが言っていることも正しく見えるので、議論がどちらに転ぶか分からず面白い。
論理的に相手の主張を崩したり、感情面で訴えかけたりと、話し合いの中でもさまざまなアプローチで対決が始まり、観ていて飽きない。
ラストには、抑えられた演出ながらとんでもなくエモーショナルな瞬間もあって、図らずも感動させられた。

豪華なセットや演出に音楽、ルックスの良い俳優なんかが無くっても、面白くて心揺さぶられる映画は出来るんだなと改めて気づかされた作品だった。


(2019.64)
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