アキラナウェイ

十二人の怒れる男のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.0
【恥ずかしながら初めて観ます名作シリーズ】
第28弾!

密室劇の金字塔をようやく!!

いやぁ…凄いなぁ…。

脚本が面白ければ映画は成り立つって事を1950年代(!)で立証しているのが凄い。

父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、陪審員が評決に達するまで一室で議論する様子を描く。陪審員の大半は少年を有罪と確信しており、審議を早く終えようとしていた。ただ1人を除いては…。

という事で、有罪11:無罪1の状態から議論スタート。
全員が合意しないと判決は出ない。
終わりたくても終われない。
帰りたくても帰れない。
帰れま10な訳だ!!

扇風機が壊れ、窓を開けようとする者、汗を拭う者、モノクロでも不思議とその蒸し暑さと議論の熱量が伝わってくる。

彼らは互いに名乗る事もなく、陪審員の番号順に座っているので、誰が誰だかわかりにくいかと危惧したが、そんな心配は杞憂に終わる。議場における論調や、休憩中の何気ない言葉の遣り取りでキャラがしっかり立っている。

裁判を振り返っていく内に、物的証拠、目撃証言、それらの信憑性にも疑いが生じてきて、有罪と決め付けていた男たちの心も綻び始める。その過程にどんどん惹き込まれて、面白い!!

密室劇でありながら、途中激しく降り出した雨がラストには止んでいるといった天候までも彼らの議論を暗示している様。

女性は選出されず男性だけ白人だけで構成されている当時の陪審員制度。チラ見しか映らなかったが、スラム街で育った白人ではない少年に対する偏見だってきっと多分にあった筈。

先入観、偏見、そして早く帰りたいという思いが混濁する議場で、1人の少年の死刑判決が決まる。

人の命を扱っているとは到底思えない発言も飛び出す中で、ヘンリー・フォンダ演じる男の冷静かつ的確なリードが冴え渡る。

いやそれにしても、「時間の無駄だ!!」「死刑に決まってる!!」とすぐに語気を荒めて、全くロジカルに考えられない強情っぱりの男にもう苛々してたまらなかった!!自分だったらこう言ってやる!こうやって論破する!ギャフンと言わせてやるのにー!!

ムキーーー!!

—— 13人目の怒れる男になっている自分に気付く。

いつの間にか蒸し暑い中汗を拭って、彼らと共に考え、議論した様な。自分もあの場にいたんだと思わせてくれる様な。そんな感覚で鑑賞を終えた。