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恋人たちのpikaのレビュー・感想・評価

恋人たち(1958年製作の映画)
4.0
「フランス映画ってどんなもの?」という疑問に一発で答えられるような印象があり、ジュテーム、モナムールを濃厚に凝縮した不倫映画だが、これぞフランス映画!と言うドライでロマンチックな手触りと、恋の後に訪れる継続という愛の難しさを端的に表現するエンディングが素晴らしく見事な傑作。

夫も子供も親友も愛人もいて裕福で何不自由ないどころか自分の時間も持てて「幸せ」を体現している1人の女。満たされ過ぎてるからこそ物足りないという人間の業をまざまざと見せられる。
冷静に考えれば「アホだろこのアマ」とイライラするような強欲さだが、そんな感情なぞ微塵も浮かばず、むしろ酔いしれてしまうほど魅せられる画面の煌めきとジャンヌ・モローの妖艶な美しさが物凄い。

観客を映画の要素として参加させてしまう演出の力に圧倒された。
余りある愚かさと相反するような美しさに魅せられいつしか同調し、ドキドキハラハラと固唾を飲んで展開を見守ってしまう。
昼と夜という空間の対比が見事であり、必ず訪れる夜明けと共に流れ込む感情を共有した瞬間、この作品が突出した傑作であると知る極上の映画体験となる。
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