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蛇にピアスのyのレビュー・感想・評価

蛇にピアス(2008年製作の映画)
4.5
この作品に触れて、わたしは「作品の毒に当たった」と感じた。わたしの中の、あまり触れたくなかったところを引っ張りださなければいけない気がして。ヒリヒリするような渋谷の明け方も、シャネルの香水も、好きだった男のタバコの吸い方も、痛みとともに記憶になった。それらは全部わたしのもので、全部わたしの手からすり抜けていった。
引力のように引っ張られたまま生きる。面白そう。見たことないものを、新しい感情を、もっと知りたい。そうやって生きていたい。そうしたらきっと、いつか何かに出会えるかもしれない。いつかの映画の退廃的でメランコリックな女の子でいたかった。若いから、傷ついてもきっと死なない。昔、ギャルが教えてくれた。「人は絶望で死ぬんだよ」。19歳、あの頃、この世の終わりみたいに悲しいことがあったって、絶望することはないって、だから私は死なないって、変な自信があった。破滅的に飛び込んでは、何度も地面に叩きつけられた。ヒリヒリした感情だけを求め続けた。そういう気持ちは、痛ければ痛いほど、生きてる気がした。わたしは生きていて、そして若いんだって、わたしの破れそうな肌が教えてくれた。痛みは今でも現実に輪郭をもたせてくれる気がする。でももう痛みばっか求めない。だってベティ・ブルーだって、ナンシー・スパンゲンだって、死んだじゃない。賢くて、面白くて、エモーショナルで、最高に刺激的だったわたしの友人たちは、22歳の今、みんなわたしの手からすり抜けていった。彼女たちといると、わたしはいつもぶん殴られた気分だった。わたしには到底書けない文章を書いて、到底思いつかないような映像を撮って、まだまだ色んなことにがんじがらめのこの狭い東京で、モラルなんてなかった。ひたすらに自由に、そのままどこかへ飛んで行った。龍と麒麟も、きっといつか飛んで行ってしまうだろう。大丈夫。意味なんてなくても、みんないなくなって痛みと記憶が薄れても、大丈夫。

これは22んときにわたしが書いた文章、ベティーブルーみたいな女の子になりたかったあの頃、でもわたしはただ純粋な気持ちで前だけを見てた、そんな女の子にはなれなかった、なりたくなかった、ね
向き合った作品、いつまでも
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