むぎたそ

父の初七日のむぎたそのレビュー・感想・評価

父の初七日(2009年製作の映画)
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主人公(長女、OL)目線で
父が亡くなってからの
葬儀の様子を描く。

しんみり。
ちょっと滑稽で笑えるところも。
泣き女や道士。
あの世で困らないように
故人に持たせるあの世の紙幣
(沖縄も似たような文化があるね)。
扱われる葬式は派手なものではなかったけど、
文化の違いを感じることができて、
面白い。

「恋するパオジャンフー」
だったかな、
「戯夢人生」
だったかな、
前に台湾の賑やかなお葬式を
映像で見たのは。
明るくて印象に残っていました。

7日かけてやるのは長いようで長くない。心でお別れをするにはそれくらい必要なんだ。まあ、それでも全然整理がつかないなんてこともよくある話で。
ちょっとかったるい劇中リズムではあったけど、テーマがテーマなだけに、時間感覚や身体感覚のリアリティとして必要だな、と思った。
あっけなさと喪失感を丁寧に描いてる。

葬式だけで終わらず、その後のそれぞれの人物のことも描いてるのもよかった。
主人公が葬式が終わって数ヶ月後に友人たちに父の死を打ち明けたり、仕事の出張で空港にいるシーンで喫煙所のタバコと機長の声でお父さんのこと思い出して泣くシーン、よかったな。(葬式の時は本当には泣けない、というのもリアリティなのだろう)
葬式の途中でお父さんとの回想シーンがあるのもよかったけど。バイク二人乗り、試験はどうだ?、私今日誕生日よ、肉ちまきをやろう、ヘンテコな合成の遺影、巨大な遺影はバイク一人で運ぶ。(けっこうグッと来ちゃったのはうちの父もバイク好きで我々もよく二人乗りをしていたから……幸いなことにまだ存命ですが)


台湾も、形式的に泣かないといけない場面とか、不自然で不思議な部分もあるんだなあ、と思いつつ、ほんと形式だけの、時に故人の存在が無視されてるような、慌ただしい日本のお葬式を想う。
どんなお葬式ができたらベストなんだろう。まあどんな葬式も急なものだしな。。準備とかなかなかできないけど。。
生前葬を毎年やってたら自分のいない本番がめっちゃチャチとかつまんないとかどうなっても悔いないかな〜とかふと思った。まあその時はいなくなってるから、もはやどうでもいいというか、葬式は生者のためのものなのですけど。
余談だけど、杉井ギサブローの「銀河鉄道の夜」でドボルザークの「新世界より」(家路)が気に入って、アップルミュージックで聴いてたら、その曲が入ってるコンピアルバムの名前が「マイラストミュージック〜出棺のための音楽」でびっくらこきました。そんなのあるのね。

そういえば伊丹十三の映画、観てないんだわ。観よう。


台湾の地方と都会(世界)の対比など、社会背景も浮かび上がる。
台湾の露店(夜市)はけっこう普通の職業なんだろうな。日本のテキ屋だと少し特殊なイメージあるけど。
学歴のない親は身を粉にして働き、子にいい教育を受けさせる。

大学生くらいの甥(おそらく大学でドキュメンタリー制作とか専攻してる?)が葬式の様子をカメラで撮ったりとか、道士のおじさんの本業は詩人で畑で詩を諳んじるシーンとか、ちょいちょい小ネタもよかった。

日本の歌謡曲は文化に根付いてるのかな。梶芽衣子が歌う曲がかかってた。

文化と感情を丁寧に描く、いい映画でしたよ。
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