しろくま兄サキス

カーラの結婚宣言のしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

カーラの結婚宣言(1999年製作の映画)
3.5
【「地域に暮らす」とはどういうことかを教えてくれる、分かりやすいテキスト】
 まぁ、カーラがここまで自分自身のビジョンと、社会的責任に対しての認識があれば、もはやこれはいわゆる”健常”と呼ばれる人々となんら変わりはないわけで。むしろ「オマエこそ何か目的もって生きているのか!?」と詰問されるようで、自分の身を振り返り恥ずかしくなる思い。本人の立場、親の立場、家族の立場、そして恋人の立場と、どこに視点を置くかでそれぞれに受け止め方に違いはあると思うが、誰が悪者というのでなく、うまくバランスがとれていると思う。

 主演の二人はもちろん演技だけど、この際知的障害者演技にリアリティがあるかないかには目をつぶりたい。なにしろ「子どもの自立」とか「社会に出る」ってのは普遍的なテーマだから。これもひとつの寓話なのだから、目くじらたてるのは野暮ってもんさね。自立が本人にとってハードルが高いかどうか、それだけの違いでしかない。ハードル高けりゃ踏み台のひとつも用意してあげようじゃありませんか。

 最後に。たまたまカーラの家庭は裕福だったから、自分の願う教育も受けられたし、一人暮らしのための部屋も手に入れられた。でももしそうでなかったら?優しい父親や理解ある姉妹がいなかったとしたら?