ちろる

鬼畜のちろるのレビュー・感想・評価

鬼畜(1978年製作の映画)
3.6
緒形拳、岩下志麻、高倉健に大竹しのぶなど、かなり豪華な顔ぶれで揃った松本清張による人間の弱さと醜さを描いた人間ドラマ。
無責任すぎる大人たちとは対照的に、子供たちは幼くたって大人が思うよりずっと色々なことがわかっている。
どこのどの部分を拾っても、この物語に出てくる大人の誰1人にも同情する気にはなれなくて、浮かんでくる言葉は自業自得。
宗吉の気の弱さが目くらましになって、男性は多少宗吉に感情移入してしまいかもしれないけれど、冷静に考えればその状況を招いたのは他でもない宗吉なわけで、一番哀れなのはどちらかといえば宗吉の妻の方である。

どちらにしても色々他にやりようはあっただろう。
今の時代ならなかなか撮影もしにくいであろう、宗吉の妻による子供の虐待シーンは本当に目を背けたくなるし、ラストに向けて追い詰められていく夫婦の殺意を薄々と感じて受け入れようとした少年の声なき悲鳴を思うだけで本当に胸が張り裂けそうでつらい。

ラストまで鬼畜な人間たちへの怒りに震えながらも、もし自分も彼らと全く同じ状況で追い詰められた精神状態になった時、「この子どもがいなければ・・・」と一瞬たりとも絶対に考えないとは言い切れるのか?
私にはそこがどうしてもそこの部分の答えが出なくて、だからこそこの作品に逃げ出したいほど居心地の悪さを感じてしまうのかもしれない。

後に残るのはあまりに醜い大人たちを見た挙句に突然世の中に放り出された2人の子どもたちの行く末のみでした。
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