マーくんパパ

花のようなエレのマーくんパパのレビュー・感想・評価

花のようなエレ(1971年製作の映画)
3.7
聾唖で知能の低い娘エレは村人の都合のいい慰み者として扱われている。夏休み帰省した学生ファブリスがこの不思議な娘に惹かれ言葉を教え、モンブランの頂見える長閑な森や丘で花飾り作り清流で魚釣りしてうち溶けていく。戦争体験で心病んだ兄の自殺と愛人に去られた痛手の母を抱きかかえ家路につくファブリスを見てエレは踵を返し森に戻って行く。なすがまま、なされるままのエレが初めて感情表現した瞬間、愛する人が自分の元を去っていく悲しみを理解した瞬間、自分が付いて行ってはいけないと判断した瞬間。耽美派ヴァデムが身体でなく心を描写したこのシーンがこよなく美しい。『道』のジェルソミーナを思い出す。オードパンは『新個人教授』でナタリー・ドロンに愛の手ほどき受けた果報者の妬みも私にはありました。