公開当時の騒ぎを今でも思い出します。
ネットの映画関係サイトが今でいう炎上のような状態になりました…
「ハッピーバースデー…ワーストムービー」
「また出た原作レイプ!…と思ったら犯人の中に原作者が!」(原作の永井豪先生も出演されてる)
大騒ぎでした…
ちなみにおれは、テレビアニメの「デビルマン」で育った世代です…
「デビール!」の掛け声で変身し、「デビルビーム!」などと叫びながら必殺技を繰り出し人類滅亡を目論む「デーモン族」と戦う子供向けのヒーローものでした。
悪魔がヒーローとなって人類のために戦うという設定がかっこよくて子供心に大好きでした…「ヴェノム」ですな😸
ところが…クラスのませた友達が…
「アニメの『デビルマン』なんてパンツ穿いててマヌケ…永井豪の原作凄いぜ!」
これに興味をそそられて原作漫画を読んだおれは驚愕しました…原作のデビルマンは下半身毛むくじゃらのまさに獣…その「ハルマゲドン」的ストーリーに圧倒されたのです。
日本の宝と言うべき原作漫画の悲しい実写化が相次いでいたので…
「またか…」
…と思ってました。
そしておれも「そんなに酷いのなら逆に観てみたいわ」と思ったのです。
みんなが言ってるように突っ込みどころでおれも爆笑したい…
でも…おれはその時は観ませんでした…
なぜなら公開から4~5ヶ月しか経ってないのに監督の那須博之氏が亡くなったというニュースを聞いたからです。
最初…あまりのタイミングに酷評に耐えきれずの自殺か…狂信的なデビルマン信者に殺されたのではないか?とまで思いました。
公表ではガンで亡くなられたそうです…
この映画を大いに笑ってやろうと思っていたおれはすっかりその気を無くしてしまったのでした。
あっという間に15年が経ちました…
ずっと頭にすみに引っ掛かっていたこの映画…TSUTAYAでフッと目に飛び込んできて…スッと手を伸ばしました…
おれはこの映画を観てたまらなく悲しくなりました。
それはこの映画の出来にではありません。
確かに出来は皆さんがおっしゃってる通り、想像を越える酷さだと思いました。
しかしおれはこう思っていたのです。
みんなの酷評を見る限り、原作のデビルマンをこれっぽっちも理解していず愛も持っていない製作陣が安易な企画にいいかげんな気持ちで望んだ結果だと…
脚本は亡くなった監督が何人もの脚本家の本に納得出来ず最終的に脚本家である奥さんに書かせたものでした。
いやぁ酷い本だと思います。各シーンの説明が全く出来ていない…だけどこの映画に詰め込んだ原作からの各シーンを観ておれは思いました。
この監督と脚本を書いた奥さん…それからほとんど演技未経験の新人たち…彼らは…おれに負けないくらい原作の「デビルマン」を愛しているというのが分かったからです…
こういうことです。
ケンジくんは話すのが苦手でボキャブラリーも貧相で物事を人にうまく説明出来ない…
そんなケンジくん誰よりも早く「ランボー」を観たのです。
大興奮の彼はみんなにその面白さを伝えようとしますがうまくいきません…
途中でみんなは大爆笑!
「ケンジぜんぜんわからん!ムキムキのロン毛が赤いハチマキして冬山に登って追っかけてきた追跡隊に石投げるの?なんだその映画?」
この「デビルマン」はそういうことだったのです…
どうしたことかこの映画を作った人たちは原作の素晴らしさを分かっていながらそれをうまく伝える手段を持ってなかったのです…どうしてそんなことになってしまったのかは分かりませんが…
みんなが訳わからんという妖鳥シレーヌのエピソード…ジンメンのおぞましい悲しさ…デーモン化した少女の悲しさ…牧村家の悲劇…明と涼の結末…
全部入れたいよね…分かる分かる…でも何でそんな入れ方したんだ?
でも入れずにはいられなかったその気持ちだけは分かるぜ…
その結果がこれか…
おれは笑うどころかなんだかとても悲しい気持ちになってしまったのです。
しかも、DVDの特典に初日の舞台挨拶が入っていたのです。
生前の那須監督…しかもそれから数カ月後に病死するとは思えないほど元気そうで…
「これは実話ではないかというようなリアリティーを目指しました」
…と信じられないような挨拶をするのです。
おれは「愛の空回り」を見た思いでした…那須監督…
みんな…この映画…突っ込みどころを爆笑しながらで結構…
この「デビルマン」観てやってください…いやほんとに酷いところ一杯です…でもね…でもね…ド下手だけど愛はあるんですよ…
この映画バカにしながらでもいいから…観て笑うのが那須監督の供養になるんじゃないかなって思ったのでした…