三四郎

鐘の鳴る丘 第二篇 修吉の巻の三四郎のレビュー・感想・評価

4.6
優しいやさしい映画だ。
一般の家庭が浮浪児に関心を持つよう、その理想を優しく時に鋭く観客に訴えている。「馬鹿げた戦争のお陰で国も人も貧乏になってしまった」昨日までは一等国、欲しがりません勝つまでは、贅沢は敵だ!挙国一致、 撃ちてし止まむ、英米撃滅!その結果がこれだ。そしてその四年間の辛抱は心の貧しき人間を多く作った。
駅で倒れた修吉、通り過ぎる人の服装と浮浪児のボロボロの服。美しい着物や洋服の女性も歩いている、対比になっているのだ。子供を嘲笑い、邪魔だからどけろと言う大人たち…。大人たちは修吉を囲みこそするが、手を差し伸べることは決してしない。大人だって生きていくのがやっとの時代だから…しかし罵倒を浴びせかけるのは如何なものか!手を差し伸べてくれるのは、新聞売りをしているお婆さん。貧しいものが貧しいものを救う、あまりに世の中悲しいじゃないか、しかし美しい…。
隆太が「ぼく、もう子供になったんだ!浮浪児じゃない!」といったことを叫ぶ場面がある。「子供」と「浮浪児」が分けられていた冷たい時代だったのだ。ここに、この科白に違和感を感じる平和な時代に生まれて本当に良かった。

「足がびっこになっても心までびっこになるな!」
深い!いい言葉だ!「自信を持ち胸張って生きろ!」という意味だ。

救出劇からいきなりクリスマス笑あまりにテンポが速すぎる!
「クリスマスおめでとう!」GHQの政策か!?戦前の日本もクリスマスを祝っていたのだからおかしくはないが…唐突すぎる。
まさおの盗んだお金の話をもっと最後までしっかりと勧善懲悪的に描いて欲しかったものだ。これが一番大切ではないか!まさおが泣きながら謝り、まさおの両親も事態を把握している?というような終わり方だったからまあいいのだが、ここは飛ばして欲しくないなぁ。救出劇をまさおが「悪かった、酷いことをしてしまった」と思いながら木の陰に隠れ見ているショットがいくつか挿入されるが、それだけで幕引きしていいのかしら?姉も改心しているシーンがいるのではなかろうか。
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