ばーとん

神様の愛(う)い奴のばーとんのレビュー・感想・評価

神様の愛(う)い奴(1998年製作の映画)
1.5
「ゆきゆきて神軍」での奥崎謙三の行動の多くが原一男の入れ知恵だったことは後に原監督自身が語っている通りで、「神様の愛い奴」を人道や倫理の見地から云々するのなら「ゆきゆきて…」の方が遥かに深刻な倫理の逸脱を問われなければならない。
この映画がつまらないのは奥崎がみすぼらしい老人に変わり果てたことを別にすれば、映画に神軍みたいな強力なストーリーを持たせる工夫をせず、本当にただのドキュメンタリーとして人間・奥崎を撮ってしまったから。

この映画のスタッフがふざけ半分に奥崎を玩具にしているとは僕は思わなかった。むしろ彼らは奥崎を崇拝しすぎだし怖がりすぎ。
奥崎で映画を撮ろうと企画した時に第一に考えたことは、神軍の二の舞になってはいけない、ということだったはず。つまり映画が犯罪を生みだすことになってはいけない、それだけは絶対に避けなければいけない。なにしろ神軍の頃とは時代が違う。
コンプライアンスの観点からスタッフは最初から及び腰になっている。だから面白くない。
もっと堂々と思い切り玩具にしてやろうじゃねえか、という気概があればまったく違う映画になっただろう(まさに神軍で原一男がやったように)

かつて佐川一政をAVに引っ張り出した連中同様に奥崎もAVに出してしまおうという発想は安易だけれど、この手の落ちぶれたアイドルを扱うならAV落ちはお約束のパターンとも言えるだろうし、暴力が駄目なら性を描こうとするのは当然っちゃ当然でもあるし、それが悪趣味なのかどうか僕にはよく分からない。
AV撮影の一コマで実現する佐川一政vs奥崎鎌三の世紀の怪人対決は見モノ。
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