せーじ

八月のクリスマスのせーじのレビュー・感想・評価

八月のクリスマス(1998年製作の映画)
4.3
168本目は、のりさんからのリクエストでこの作品を。

韓国、ソウル市内にある小さな写真屋を営む男と、その街の警察署で交通係を務めている女性との淡い恋を描く作品。

切ない。
切なさで、胸がいっぱいになってしまった。。。

こういう題材の作品って、無駄に甘ったるくクドい演出になってしまいがちだと思うのだけれども、この作品はこの手のジャンルとしては全体的にかなり抑え気味な演出でまとめられており、そういうのが苦手な自分でも最後まで観ることが出来た。
ただし、主人公の身に降りかかっているものが何なのかが、割と早い段階であっさりと明らかになり、それ故に明らかになってからの主人公の行動一つ一つが、何気ない行動でも「そういう状況である主人公」という枕詞がかかった状態で観ていくことになるので、そこで切なさが止まらなくなってしまう。特に「老婦人の撮影」と「取扱説明書を書くくだり」、そして「喫茶店の窓越しに写る姿」は、個人的にもかなり胸が締めつけられてしまった。切ない。
何より主人公を演じている、ハン・ソッキュさんの表情と演技が素晴らしい。彼の「お客さんやヒロインをはじめとする親しい人と相対している時は、どんな時でも常にニコニコと穏やかな表情を崩さない」という人となりを、秀逸に演じていると感じた(もちろん、そうではない時の彼の表情やモノローグも凄いのだけれども)。ヒロイン役の彼女も、ちょっと勝気で幼い部分があったりもするという役柄を素直に演じられていたと思う。

そんな訳で結末は、とても切ない終わり方をしてしまうのだけれども、あれは彼なりに彼女を傷つけまいとして考えた抜いた結果なのだろうと思いました。ただ、もし自分がそういう立場だったとして、自分にはあそこまでやれる甲斐性は無いし、ちょっとキザなやり方だとも思うし、ヘタを打つととても無責任な行動にもなりかねないと思うので、彼女に対しては何もせずに(出来ずに)終わらせてしまうだろうなぁ、と鑑賞後にぼんやり思ったり。
作品として甘い部分(sweetな部分という意味です)や、音楽で盛り上げ、畳みかけようとする部分が無い訳ではないので、ジャケットデザインの悪さも含めて「ドガジャーンとこってりした作品なんじゃないか」と食わず嫌いをしてしまいそうになるのは致し方がないかもしれませんが(実際自分がそうでした)、映画的な描写や演出が、驚くほどきちんとなされている良作だと思います。
興味がある方はぜひぜひ。

のりさん、ありがとうございましたm(__)m
せーじ

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