バナバナ

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポのバナバナのレビュー・感想・評価

3.8
大谷! 全部お前のせいやろ! お前が傷つくなんて許さーん!
…と、後半は怒りの気持ちがフツフツと沸きました。

佐知はすごく上品な話し方をするので、良いとこの御嬢さんが大谷のせいで極貧の生活をしているのかと思っていたら、
元々貧しい家の出で、女給さんをやっていたのですね。

彼女は、夫の借金の為に働き始めた飲み屋でも、彼女の明るさと上品さと誠実さから、お客さんからはまるで、AKB48の少女達の様に人気が出ます。
大谷に金を盗まれ、ツケを踏み倒された飲み屋の夫婦でさえ、彼女の誠実さの前には優しく接してくれます。

そうです。彼女は大谷と知り合わなければ、例え大谷と別れても、子持ちであろうとも、本来なら幾らでも幸せになれる人なんです。
あー、それなのに、それなのに…。

初恋の弁護士が「着飾ったご令嬢と向かい合った時、僕は初めて君の美しさに気付いた」と言ってましたが、それくらい子持ちでも中身が美しい人なんですよ、佐知さんは!
あー、それなのに、それなのに…。
大谷に回し蹴り喰らわせたいくらいです。

佐知といい、『人間失格』の良子といい、最初の妻の小山初代さんがモデルなのでしょうか?
初代さんは芸子の出だけど、元は佐知のように上品で誠実な人だったのかな。
佐知にモデルがいるのか、自分の一番好みのタイプを総合して作ったキャラクターなのかは知りませんが、
現実でも、太宰にかかわった女性たちが、みんな不幸になってしまったのが悲しいです。
太宰って、こんなに客観的に自分の経験を小説に織り込ませられるのに、どうして自ら死を選んだんでしょうか。女性側の目線もバッチリなのに。
まあ、今更言っても仕方ないですけど。
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