「男はつらいよ」シリーズの第7作目。
本作は、シリーズの中でも、異色の作品である。
その大きな要因が、知的障害を持つ少女がマドンナという点である。
現代でこそ、障害やマイノリティを描いた作品は数多くある。
しかし、本作が公開された1971年に、知的障害を含めた障害をテーマに含めた作品は少なかっただろう。
さらに、障害への理解も、現在よりは進んでいなかったはず。
そういった中、知的障害を持つ若者が、家庭の経済的事情を理由に、出稼ぎに行かなければならない現状を描いた点。
そして、その若者を手厚く支援する先生を描いた点は、評価すべきである。
また、本作では、前作に引き続き、電車でのシーンが見受けられた。
中でも、駅のホームで寅さんがマドンナである花子を見送るシーンは、寅さんの人情がよく表れている名シーンだった。
従来から寅さんというと人情のイメージがある。
ただ、私自身、このイメージは、シリーズが続くに従って、より濃くなっているように思う。
第1作目の寅さんは、人情というより、下品で失礼という印象が強かったほどである。
それが、次第に、不器用ながらも、いざと言う時には、温かい心を持っている現在のイメージになってきた。
シリーズものを第1作目から見る面白さは、次第に寅さん像が出来上がる様を見ることができることにもあるだろう。