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男はつらいよ 奮闘篇のSHOHEIのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 奮闘篇(1971年製作の映画)
3.8
寅次郎の母、お菊が柴又を訪ねてくる。再会に気乗りしない寅だったがさくらたちに説得され渋々母親と顔を合わせることに。しかしお菊は寅に対し遠慮ない言葉を浴びせる。怒った寅は柴又を飛び出す。旅先で寅は警察の世話になっていた田舎育ちの少女を見かける。放っておけず故郷青森までの帰り賃をカンパし、困ったときは柴又のとらやを尋ねるようメモ書きを渡して少女と別れるも、事情を知らないおいちゃんおばちゃんのもとにその少女が訪ねてきて…。

シリーズ7作目。久々に寅次郎の実母お菊が登場。あまりに愛想なかった前回の登場時に比べれば比較的マイルドなキャラクターになっていて、貧しい暮らしゆえに寅を手放したいきさつと母親としての苦労が明かされる。いくら貧しくとも実の子を置き去りにするのはどうなんだ、という問題もあるが本作製作当時は高度経済成長に湧き、しかし実は戦前戦中の記憶を誰もが心の中で引きずっていたのではないだろうかと感じさせられる。さくらと博、その息子の満男がアパートで暮らす描写も当時ピークを迎えていた核家族化の様相を図らずも取り入れた場面。本作のヒロインは榊原るみ演じる太田花子。弘前出身の田舎娘で軽度の知的障害を負った少女というかなり踏み込んだ設定。障害があるがゆえに純粋無垢で、珍しく寅さんが関係をリード。「寅の結婚相手はまともじゃない」というような冒頭のお菊の台詞は実はここにかかっていて、かなり配慮を欠いているような気がするが当の寅さん本人はほとんど偏見なく花子の面倒を見ている。榊原るみの表情が本当に可愛らしくて父性をくすぐる。婚約寸前までいく展開も新鮮。ちなみに本作に至るまで何度となく失恋を重ねている寅さんだが、その連敗ぶりがおじちゃんおばちゃんたちのネタにされていてメタ。一作目のマドンナ冬子の再登場も嬉しい。後半では当時の青森の家屋なども映されているが、やはり東京との格差を感じる。
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