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男はつらいよ 奮闘篇のbluetokyoのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 奮闘篇(1971年製作の映画)
4.1
マンネリを避けるためなのか、男はつらいよ、再開の次作目で、いきなり、もの凄い変化球。シリーズの中でも、異色な作品ではあり、冒険的なテーマである。このあとの「学校」シリーズに結びついていくと思う。
あまりに時代を先取りしていたので、公開当時はそれほど評価はされなかったのかもしれないが、いま見ると、すごく斬新でいい作品である。

冒頭は、とらやへ菊さん(寅さんの母親)が来るところから。寅さんから結婚するという葉書が送られてきたので挨拶に来たのだ。
寅さんの早とちりによるガセネタだとすぐにわかる。電話でアポを取らないで、いきなり、菊さんは来てしまうものなのかな。
電話で聞けば済むことなんだが、まあ、そんなこったろうと思った、という顔付きなので、とらやへの挨拶が主ということなんだろう。
そんなときに限って、寅さんは帰って来る。
そうなると、やっぱり、せっかくなんだから、母親に会って来なさい、ということになる。嫌々ながら感出しまくりの寅さんは、さくらさんに、連れられて、菊さんの宿泊するホテルへ。
案の定、親子喧嘩、寅さんは飛び出してしまう。また、旅へ出る。

沼津のラーメン屋でラーメンを食っているとき、ものすごく頼りなさそうな、ある若い女性と知り合う。ラーメン屋店主によると、その女性は知的障害者だという。心配になった寅さん、女性のあとを追うと、やっぱり、交番の中でごたごたしている。堪らず、割って入った寅さん。
事情がわかる。その女性の名前は太田花子。出身は青森。紡績工場かなんかに働きに出ていたが、対応できないので半年前に飛び出す。バーかなんかにいたのだが、そこもダメだった。ということで、青森に帰るということだ。
だが、もちろん、おカネも持っていないし、帰り方はまったくわからない。
寅さん、とりあえず、切符を買ってやる。それでも、どうやって乗り継いで帰るか、わからなさそうだったので、困ったときは、柴又のとらや、に行けと紙に書いて渡す。

で、やっぱり、花子はとらやに現れる。寅ちゃんに言われてきた、と言いながら。
さらに、寅さんも、心配で、虫が知らせたのか、とらやに戻ってくるのだ。

いろいろあって、花子はとらやで働く。寅ちゃんと結婚してもいいとまで、言い出すのであった。

そんなある日、とらやに、青森から花子を引き取りに、先生が訪ねて来る。
さくらたちが、青森の役所あたりに知らせたのだ。

名前が福士先生。小学校の先生。おそらく、ふくしは福祉、なんだろうな。(小学校の先生ではなく、障害者の専門学校なのかもしれない。そういう設定にしてしまうと差しさわりがあるのだろう)
小学校の先生が、花子を大人になるまで面倒を見ているのはおかしいし、就職先まで探している。ただ、専門学校だと、問題があるので、小学校ということにしているのだろう。
それにしても、半年以上前に行方不明になったら、警察に捜索願を出すんじゃないかな。いや、すでに出したのかな。

取りあえずは、田野沢小学校の用務員として働いているみたいだ。それはよかった。一番よかった。

寅さんが花子が待っていると思って上機嫌で帰って来る。すると、すでに、待っているはずの花子はいない。先生に連れられ、青森に帰ったという。
荒れまくる寅さん。花子を無理やり青森に帰したんだろう、みたいに。

それじゃ花子は、オレみたいなヤクザもんの傍にいるより、先生の傍にいたほうが幸せってえのか。ええ、そうなのか、はっきり言ってみろ!

さくらがしっかりした声で言う。ええ、そうよ。お兄ちゃん、その通りよ。

このシーンは、すごいなあ。号泣ものだなあ。悲しいなあ。
そうだよなあ。花子と寅さんじゃあ、共倒れになるかもしれない。
なにがベストなのか、なにがベターなのか。なにが正解なのか、こっちもわからない。
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