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告白のdeenityのレビュー・感想・評価

告白(2010年製作の映画)
5.0
何という作品なんだ。衝撃。冒頭からラストまでとにかく釘付けにされて、不謹慎かもしれないけどかなり好みの作品だった。

いや、本当はこういう語りすぎな作品は好きじゃないものが多い。冒頭の松たか子の語りなんて30分近く語りっぱなしで、ひたすら説明の嵐。でも上手いのは、全てを語っているように見せて真相はどうなのか、という余地が残されている点。つまり、「教師という立場の人間そのものが悪ではない」という印象のために、言葉の真意を読み取らせようという補完を脳内で勝手に行わせる点だ。
「教師、それも自分たちの担任がそんなこと思うはずがない。そんな卑劣な行為をするなんてありえない。」という幻想。そんな幻想を意にも介さず、あっさりと振り払ってどん底に突き落としていく冒頭。
おそらく普段は担任を無視して相手にもしていない騒がしい生徒たちが、次第に言葉を失っていく表現。舞台セットのような演出。スローモーションで牛乳を落とすなどのメタファー。こういった表現を随所に組み込みながら、あくまで淡々と語られる事実の衝撃に、タイトルが映し出されるまでの30分間、一切目を離す隙を与えなかった最高の冒頭だと思う。

ただ、上手いのはそこだけではなく、作品を通して担任の森口が言っていることはどこまでが本当なのか、という点を想像させるしかないように構成している点も素晴らしい。
教師が嘘をつくはずがないという先入観から、さも信憑性があるかのような発言をしているが、実のところそれは森口の語りでしたかない。牛乳にHIVの血液を混ぜたのも、次の担任を唆したのも、渡辺の母親に会っただの爆弾を仕掛けただのも全て森口の語りから推測するしかない。
それなのにも関わらず、渡辺を、そして観客を圧倒的に信じ込ませる説得力があったのは、森口を演じた松たか子の終始貫いた冷酷且つ残酷なことをしかねないただならぬオーラである。完璧な演技に思わずゾッとさせられた。

そして、その推測するしかないからこそ、ラストの森口の「なんてね。」って言葉が巧妙な嫌らしさを持つのである。
「これからが更正の始まり」なんていう実に担任らしい言葉と作中ほとんど映されない感情を露わにするシーンの直後に発せられたその言葉は、一体かかるのはどこなのか。全て嘘だととらえれば良心的だが、はたまた直前の言葉にかかるなら担任らしいと思わせたその思いを最後まで裏切ってくる言葉となる。実に巧みだ。

その捉え方によって本作のテーマは一変する。闇を抱えた生徒の心に響かせるためにはどうすべきかという教育そのもののあり方か。あるいは渡辺のような子を生み出してしまう親の愛情へのあり方への忠告か。人のデリケートな部分に触れると殺人鬼を生み出しかねないという懸念とも取れる。見方一つで何通りにも幅が広がる作品だと感じた。

とにかく言えるのは素晴らしく傑作であるということ。そして時間が許すことなら、あの騒がしく弱いはずなのに強がって誤魔化していたクラスメートのパートも見たかった。
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