Tutu

道のTutuのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.0
超絶クズ人間、旅芸人のザンパノは、(淀川長治さん曰く)ちょっと頭のイカれている娘・ジェルソミーナを金で買い、「胸筋で鎖をちぎる」というつまらない芸で日銭を稼ぐだけの、旅から旅の生活を送る。

見かけ上は男女(夫婦)のお話ではある。観たまま正直に男女の悲しい関係性に涙することのできる筋書きではあるが、もっとざっくり言ってしまえば「後悔先に立たず」というテーマを含むものであるだろうから、これまでの生き方を振り返ってみて、「あの時こうしておけば良かった」と未だに自らを苛むような出来事を思い返しながら観ても良いかもしれない。
そんなわけなので、『道』という題名にしても、例えば「人生」とか「時間」みたいな言葉に置き換えながら、この映画を鑑賞するのも良いかもしれない。すべての道はローマへ続いているかもしれないが、過去へと繋がる道は絶対に存在しない。より良い人生を選び直しながら真理に辿り着くことは誰にもできない、やり直したいけどやり直せないというやるせなさが胸にぐっと迫ってくる。

僕にとって本作は、「後悔」ただそれだけを切り取って見せてくれるものであって、それだけが見られるのであれば、ザンパノとジェルソミーナでなくとも良い作品だったと思う。以前『ベン・ハー』を観た時にも、「これは『ジュダ』でなくとも良い」と全く同じことを思ったけど、それはきっと、誰の人生においても日常的に起こっている普遍的な出来事がテーマとなる映画だからだろう。あまりにも普遍的過ぎて日頃は見過ごしてしまうそんなテーマを、いつの世の人間に対しても訴えかけることのできるような形で、これほど鮮やかに切り取ってみせる作品は、そのテーマの普遍性によって大傑作の風格を漂わせながら、50年後、100年後も万人の共感を集め続けていくんだろうと思う。素晴らしい映画である。

どうせしなければならない後悔、それをどう活かすか、非常に難しい問題ではあるけれど、それに対する答えはザンパノの慟哭から先のシーンと一緒に、この作品からはばっさりと切り捨てられてしまっている。自分で考えろ、という示唆にも思うけどフェリーニ監督も人が悪いなあ。

僕はザンパノとジェルソミーナの二人が自分の両親に見えて仕方なかったので、両親にはぜひこの映画を観てもらいたいと思う。程度の差はあれど、父はザンパノそっくりの人間であって、実の父がある一面においては全く尊敬に値しない人間だというのは、仕方ないことにせよ我ながら中々物悲しいものがあるが、それはまた別の話か。鑑賞500本目記念作品。